<訴訟対策シリーズ>荒木町長の「模範解答」【町の宿題⑤】屋久島町長交際費・住民訴訟
森山議員とは別に贈答した国会議員のべ21人はだれ? 私費による贈答の有無は?
社長以外の高額寄付者への贈答は?
【左】屋久島町の荒木耕治町長【中央】イセエビ(左上)、屋久杉箱入り焼酎(右上)、屋久島産の焼酎(下)【右】屋久杉万年筆
屋久島町の荒木耕治町長が交際費で国会議員らに高額な贈答をしたのは違法な支出だとして、同町の住民が町を相手取り、荒木町長に贈答で使った約200万円を賠償請求するよう求めた住民訴訟――。
鹿児島地裁は9月12日に開かれた第4回口頭弁論で、町に四つの「宿題」を与えた。いずれも、これまで町が明らかにしてこなかった点に対し、地裁が説明を求めたもので、町の答えは訴訟の結果に大きな影響を与える可能性がある。
その【町の宿題】について詳細に伝える連載の最後となる5回目は、四つの宿題に対する町の「模範解答」を想定したうえで、どのような答えであれば、荒木町長による贈答の正当性が認められるのかを考察したい。
少なくとも贈答「50万円分」は増えるのか?
【宿題①】森山裕衆院議員に対するすべての高額贈答について詳細を明らかにせよ。
荒木町長は2017~2021年度の5年間で、自民党の森山裕衆院議員(鹿児島4区)に対し、少なくとも12件、計50万円分の高額な贈答をしている。ただ、これは屋久島ポストが独自の取材で明らかにした件数と金額だ。町は贈答記録を開示する際に、「個人情報」を理由に国会議員を含めて全贈答先の個人名を黒塗りしており、森山衆院議員にはもっと多くの贈答があった可能性がある。
住民が証拠提出した贈答記録には、贈り先が森山衆院議員と判明したもの以外に、のべ21人の国会議員に贈答した記録がある。その21人のなかに森山衆院議員の氏名がなければ、贈答額の計50万円はそのままとなり、町としては「模範解答」となるのだが、果たして、どのような答えになるだろうか。
荒木耕治町長が衆院議員5人に焼酎を計30本贈り、8万6160円を支出した際に起票された交際費使用伺いの文書。このなかに森山裕衆院議員が含まれているのか否かはわかっていない
私費でも贈答を続けているのか?
【宿題②】森山裕衆院議員に個人的な贈答をしたことはあるのか。あれば、その目的は?
一連の贈答について、森山事務所が「町長個人からの贈り物」との認識を示していることについて、荒木町長は2022年9月13日の町議会一般質問で、こう答弁している。
「国会議員、鹿児島県とか、私も町長になる前は、旧町時代は議員もしていたので、個人的なつき合いで私的な贈答は、中元、御歳暮、そういうことはずっとそういう時からもやってきたので、そういう意味では、私が町長になってから贈ったものも、(森山事務所は)そういう(個人的な贈答だという)理解をしているのではないかと思っている」
つまり、森山衆院議員への贈答は、荒木町長が町長になる以前からずっと続けられており、それゆえに、町長交際費による贈答についても、森山事務所は「町長個人からの贈り物」だと認識しているのではないか、ということである。
それでは、なぜ裁判官は、公費のほかに私費による贈答があるのか否か質問をしたのだろう。もし今現在でも、荒木町長が私費で森山衆院議員に贈答を続けていれば、公費での贈答も妥当だということなのか。
いずれにしろ、荒木町長が公費に加えて、私費での贈答を続けているようであれば、その贈答記録を示すことが「模範解答」になるであろう。
鹿児島県以外から選出の国会議員もいるのか?
【宿題③】鹿児島県選出の国会議員5人に贈答しているが、この5人は誰なのか。屋久島町との関係性と贈った目的は?
先述したとおり、荒木町長は森山衆院議員のほかに、のべ21人の国会議員に贈答している。裁判官が指摘したのは「鹿児島県選出の国会議員5人」だが、それだけでは国会議員に対する全贈答を網羅したことにはならず、説明としては不十分だ。
まずは森山衆院議員とは別に、国会議員21人の氏名をすべて開示し、贈答した内容や目的、町との関係性について詳細に示すことが求められる。そして、その説明に贈答する合理的な理由が認められれば「模範解答」となるが、その一方で、単なるお中元やお歳暮のような儀礼的なものであれば不適切となるであろう。
さらに、もしそのなかに、贈答先に鹿児島県以外から選出された国会議員がいた場合、町はどんな理由説明をするだろうか。
荒木耕治町長が衆院議員3人と参院議員2人に焼酎を計30本贈り、5万3060円を支出した際に起票された交際費使用伺いの文書。このなかに森山裕衆院議員が含まれているのか否かはわかっていない
親善大使「屋久島いとこ」全員に贈答しているのか?
【宿題④】町長の知人である民間会社の社長に高額な贈答を続けているが、なぜ贈り物をする必要があるのか?
荒木町長は2019~2021年度の3年間に、知人の社長に対して計121本の焼酎や工芸品、魚介類を8回にわたって贈り、町長交際費から計38万4809円を支出している。3年間に38万円超の贈答はかなりの高額だが、特に目立つのは2019年の4~5月で、わずか3カ月間に計26万5732円分の贈答をしている。
そして、贈答内容もなかなか豪華だ。「屋久杉万年筆・ボールペンセット」に10万8000円、焼酎60本に10万8630円、樹齢1000年を超える屋久杉で製作した特製箱に入った焼酎「愛子」1本に2万4000円を、それぞれ支出しており、どれも一般町民には手が届かない高価なものばかりである。
贈答した理由について町は、社長が町の親善大使「屋久島いとこ」を務めていて、「様々な形で町の振興、発展に寄与」していることを挙げている。さらに、2019年に起きた入山協力金3000万円横領事件の際に、1100万円の高額な寄付を受けたことで、「町の窮状を救ってもらった経緯もある」としている。
そこで、最後の宿題に対する「模範解答」だが、まずは、社長以外にもいる複数の「屋久島いとこ」に対して何らかの贈答をしていれば、贈答が豪華すぎるという問題は残るとしても、少しは町の主張に説得力が出るかもしれない。そして、社長からの寄付に対する贈答については、社長以外にも数百万円~1000万円の高額寄付をした団体や個人が複数あり、それらの寄付に対しても同等の贈答をしていれば、裁判官に納得してもらえるかもしれない。
次回、第5回口頭弁論は10月31日。それに向けて町は、10月10日までに「宿題」に対する「解答」を準備書面で明らかにすることになっている。
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