衆院議員5人、町長の贈答に「個人からの贈答」「係争中で回答を控える」などと回答 屋久島町長交際費・住民訴訟
被告町「離島振興法改正を見据えた要望活動の支援に対する謝意」➡ 森山衆院議員含む5人「公務に関する贈答」との回答なし
【左】屋久島町の荒木耕治町長【上】荒木町長が贈答した自民党の国会議員5人。(左から)宮路拓馬、小里泰弘、武部新、谷川弥一、森山裕の各衆院議員(自民党ウェブサイトより)【下】国会議事堂(Wikimedia Commons より)
屋久島町の荒木耕治町長が交際費で国会議員らに高額な贈答をしたのは違法な支出だとして、同町の住民が町を相手取り、荒木町長に贈答で使った約200万円を賠償請求するよう求めた住民訴訟――。
自民党の森山裕衆院議員(鹿児島4区)以外の贈答先として、被告の町が氏名などを開示した衆院議員4人が、原告の住民から贈答に対する認識を問われ、「個人からの贈答品」「係争中なので回答を控える」などと回答したことが、訴訟関係者への取材でわかった。町は「離島振興法改正を見据えた要望活動などで、各議員に支援を受けたことに対する謝意」などと贈答理由を説明しているが、町と同様の認識だと回答した衆院議員はいなかった。
「公費?」「私費?」各議員に贈答に対する認識を質問
贈答先の国会議員として、町が開示したのは、いずれも自民党の宮路拓馬衆院議員(鹿児島1区)、小里泰弘衆院議員(鹿児島3区)、武部新衆院議員(北海道12区)、谷川弥一衆院議員(長崎3区)の4人。
訴訟関係者によると、原告の住民は10月10日以降に各衆院議員の事務所にメールを送り、次の内容で質問をした。
質問1:荒木町長からの贈答についての認識。公費による贈答なのか、それとも町長個人からの贈答なのか?
質問2:贈答理由として町は、離島振興法改正を見据えた要望活動などで、各議員に支援を受けたことに対する謝意や、今後も協力が得られるようにとの趣旨で贈ったと説明しているが、それに対して、どのような認識か。離島振興法改正に関係する贈答との認識か、それとも全く関係ない個人的な贈答との認識か。または、個人的な贈答で、衆議院選挙の当選祝いとの認識か?
武部事務所、送り状なく「不明」
それらの質問に対し、各事務所は10月26日までに次の内容で回答をした。
宮路事務所:「個人からの贈答品との認識です」
宮路拓馬衆院議員(自民党ウェブサイトより)
小里事務所:「本件については係争中のため、お答えできません。あしからず、ご了承ください」
武部事務所:「お送りいただいた際に貼付されていた送り状も現存していないため不明です」
谷川事務所:「係争中との事で回答は控えさせていただきます」
谷川弥一衆院議員(自民党ウェブサイトより)
各事務所からの回答に加え、すでに森山事務所が「贈答品は町長個人からの贈り物だとの認識」と説明していることから、衆院議員5人のうち、2人が「個人からの贈答」という認識であることが判明。さらに、その他の3人が「係争中なので回答を控える」「不明」としており、町が主張する「離島振興法改正延長を見据えた要望活動」に関係する贈答であることは確認できなかったという。
屋久島町が鹿児島地裁に証拠提出した交際費使用伺いの文書。自民党の国会議員5人の氏名が黒塗りされることなく開示されている
住民「公費と認識」との回答なく「不適法な支出」
それらの回答を受けて、住民は10月31日午後に鹿児島地裁で開かれる第5回口頭弁論で、各事務所からの回答文を証拠として提出。準備書面のなかで、「(町は)衆議院議員5人に贈答した理由として『日頃から離島振興を含む各種要望活動に協力をいただいている』『日頃から全国離島振興協議会の用務遂行の場で様々な尽力をいただいていた』などと主張しているが、5人の衆議院議員の回答を踏まえると、一連の贈答に対して、屋久島町民の公費を支出することは不適正かつ不適法であることは明らかである」と主張する予定だという。
自民離党特別委の武部・谷川の両議員への贈答「立法の平等性の観点で不適切」
また、自民党離島振興特別委員会の事務局長である武部衆院議員、同特別委員会の委員である谷川衆院議員について、住民は「離島振興法改正に関わる重要な立場にある」と指摘。そして、両衆院議員が「国民に対して、公平公正が求められる立法行為」に関わっていることを踏まえ、「その利害関係者ともいえる荒木町長からの要望を受け付けたうえで、約1万7000円分の贈答を受けることは、立法の平等性の観点からも不適切」だと主張するという。
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