不正告発の住民に「名乗り出られるのか」:【検証 屋久島町政】(6) 出張旅費不正問題
「氏名の公表を」「議会で証言すべき」
岩山鶴美、榎光徳両町議が異例の言及
希薄な告発者保護意識 百条委設置案めぐる反対討論で
(この検証シリーズは毎週火曜日に掲載します)
屋久島町の荒木耕治町長による出張旅費不正などについて調査する百条委員会の設置案。2019年12月17日の町議会に提案されましたが、反対10人、賛成3人で否決されました。
出張旅費不正などを調査する百条委員会の設置案は、反対10人、賛成3人で否決された(2019年12月17日)
多数決は民主主義の原則なので、この結果は受け入れなければなりません。しかし、提案に反対する討論のなかで、荒木町長の不正を証言した住民に対し、「氏名を公表すべきだ」「議会で証言できるのか」などと述べ、いずれもできないであろうから、その証言には「信憑性がない」と断じる主張があったことには、大きな疑問が残りました。
その当時は分かりませんでしたが、結果的には、この住民の証言が正しかったのです。そして、荒木町長は議会や取材でうそをつき続け、自分の不正を隠蔽しようとしていたのです。
それにもかかわらず、反対した議員たちは、荒木町長を一方的に信じました。そして、不正の証言に対して「名乗り出られるか」「議会で証言できるのか」と迫り、複数の住民が発した声に耳を傾けることなく、その証言を抹殺してしまいました。
旅費不正問題などを調査する百条委員会の設置案に反対して討論する岩山鶴美町議(2019年12月17日)
もし、不正の証言をした住民が、この反対討論を聞いていたら、恐怖を感じたことでしょう。
町をよくしようと、「悪いことは悪い」と言ったら、町議会に引きずり出されるかもしれない。町議会の議員たちに本当にことを伝えても、まったく信じてもらえない・・・・・・。
自分たちの代表であるはずの町議たちに、裏切られたと感じるような反対討論でした。
旅費不正問題などを調査する百条委員会の設置案に反対して討論する榎光徳町議(2019年12月17日)
▶今回のポイント
・不正調査の百条委員会は反対10人、賛成3人で否決
・反対討論で不正証言の住民に対し「氏名公表を」「議会で証言できるのか」
・結果的に町議会は住民の声を聴くことなく、不正をした町長を守った
今回は、2019年12月19日に掲載した記事「不正を証言した町民を『さらし者』にする反対討論 百条委員会設置案審議」をみてみましょう。
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屋久島町の荒木耕治町長が東京などに出張する際、町役場が購入した普通運賃の航空券を払い戻し、その半額以下となるシルバー割引で再購入して、差額を着服しているのではないか――。そんな疑惑の目がいま、多くの町民から荒木町長に向けられている。
町議会でシルバー割引の利用を否定する荒木耕治町長(2019年12月10日)
その真相を解明しようと、12月17日の町議会で提案された百条委員会(調査特別委員会)の審議では、一部の町議が、内部告発者を守る「公益通報者保護法」の趣旨に反する討論を繰り広げた。荒木町長の「不正」を証言した複数の町民について、「氏名を公表してほしい」「(議会に)連れて来られるのか」などと発言。町民を議会で「さらし者」にするかのような意見が続いた。
町議会で証言者の氏名公表を迫ったのは、岩山鶴美町議だ。
荒木町長の出張旅費着服疑惑を報じた南日本新聞社に対して、「新聞記者の方に証言者の氏名を出してほしいと思うくらいだ」と発言。さらに「その証言者が名乗り出られるのか」「発議者が(議会に)連れて来られるのか」と迫り、その証言内容の信憑性は検証できないとの考えを示した。
さらに、証言者に議会での証言を求めたのは、榎光徳町議である。
新聞記事にある証言者について、「これが事実であれば、この人たちが証言をすることになり得る」と発言。続いて、「証言者が名乗り出ないとなると、信憑性を検証できない」と主張し、百条委員会の設置に反対した。
荒木町長の「不正」を証言した町民に関する発言は以下通り。
《岩山鶴美町議の発言》
発議者が言われている根拠が、どの程度信用できるのかというのが問題である。
南日本新聞社にしても、あの見出しの書き方と記事が、いかがなものかと思う。二人の新聞記者の方に証言者の氏名を出してほしいと思うくらいだ。もちろん、新聞社は明らかにしないと思うが、その証言者が名乗り出られるのか。発議者が連れて来られるのか。その証言内容の信憑性を検証できないであろうと思う。
議会が振り回されるのは適切ではないので、反対する。
《榎光徳町議の発言》
2点目についても、マスコミ等でその内容が報じられている。取材では「複数の関係者が空港の窓口で町長が航空券を払い戻し、シルバー割引券を買う姿を見た」と証言したということ。それから、12月10日の一般質問で提案者が「多くの住民から町長が空港窓口で、普通運賃券をシルバー券に切り替えていると聞いた」と指摘しているが、これが事実であれば、この人たちが証言をすることになり得るであろうと考える。
果たして、名乗り出てくるんでしょうか。証言できるのかどうか。そのほか、大変不確定な要素があります。
また、証言者が名乗り出ないとなると、信憑性を検証できないという恐れも出てくるのではないかという考えもある。
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▶今回の教訓:町議は町民の声をしっかり聴く
たった2年前のことでも、その結果が判明して「負の事実」となると、「あの時、どうすべきだったのか」ということがみえてきます。
屋久島町民の代表である町議たちは、だれのために町議会の議場に立っているのか。
この百条委員会設置案の討論から、大半の町議たちが、そんな当たり前のことを理解していないことが分かります。
結果論で言えば、この百条委員会に反対した10人の町議たちは、町民ではなく、荒木町長のために、あの日の討論と採決に臨んだことになります。
■【検証 屋久島町政】記事一覧