鹿児島県屋久島町、工事の進捗を把握せずに放置 補助金申請うそ記載問題
すべての工区で「工事完成」の報告なし 報告が一切ない工区も
担当課長「工事管理が杜撰だった」
町内の業者は町の対応を疑問視
問題となった5工区の業者が町に提出した「工事月報」。2020年11月分で工事出来高「12.00」%と報告したのが最後で、それ以降は提出がなく、実際に工事が終わったのは2021年9月だった
鹿児島県屋久島町の補助金申請うそ記載問題をめぐり、同町が、契約で請負業者に義務づけられている工事の進捗状況を月ごとに報告する「工事月報」の提出がなかったり、途中で提出が終わっていたりしていたにもかかわらず、業者に催促をせずに放置していたことが、調査報道メディア「屋久島ポスト」の取材でわかった。町は、厚生労働省から交付される補助金の申請の締め切りに間に合わせるため、工事が終わっていないのに、うその「工事完成日」を申請書類に記載していたが、そもそも工事管理そのものが杜撰だった。町は工事が予定通りに進んでいないことを早い段階から把握しており、うそを記載したのは「予想できない事案が重なった」(荒木耕治町長、2021年12月7日の町議会12月定例会)ためではなかったことになる。
鹿児島県の「土木工事施工管理基準」では、工事の進捗状況を把握するため、月ごとの工事報告を義務づけている
町は契約で請負業者に提出を義務づけ
工事の進捗状況を月ごとに報告する「工事月報」は、税金を使った公共事業の進捗状況を行政が適切に把握するために不可欠な報告書だ。鹿児島県は請負業者に提出を義務づけており、町もこの県の基準に従って工事の管理をしている。請負業者がこの月報を町に提出しなければならないことは、町と業者が交わした工事請負契約の第11条に明記されている。町は毎月末に提出される月報で、その都度、工事の進み具合(出来高)を確認している。例えば、工事が完成すると月報には「100%」と記載され、工事を管理する担当課長らが確認印を押す。
屋久島ポストが入手した月報によると、全工区で工事の出来高を「100%」と報告した業者はなかった。また、月報の提出状況もまちまちで、4業者が2021年2月、3業者が同年1月、1業者が2020年11月に、それぞれ提出したのが最後だった。残りの1業者は報告を一切していなかった。例えば、工事の完成が2021年9月に大幅にずれ込んだ5工区では、月報が提出されたのは2020年11月期のみで、出来高は「12%」と記載されていた。
つまり、計9工区のうちの八つの工区では「工事完成」の報告がないまま、途中で提出が終わり、残り一つの工区では、月報の提出が一切なかった。
実際には工事が終わっていない段階で、町が工事請負代金を前払いした5工区の業者が提出した「工事月報」。2020年11月に工事出来高「12.00」%と記載した後は報告がなく、実際に工事が終わったのは10カ月後の2021年9月だった
町は工事の大幅な遅れを知っていた
業者が提出した月報には、担当課である町生活環境課の矢野和好課長や参事、担当者が確認印を押していた。
各工区で報告された最終の工事出来高は次のとおり。丸ガッコ内は最終の報告月。
1工区:39.6%(2021年1月)
2工区:59.0%(2021年1月)
3工区:95.0%(2021年2月)
4工区:53.8%(2021年2月)
5工区:12.0%(2020年11月)
6工区:74.63%(2021年2月)
7工区:報告なし
8工区:0.0%(2021年1月)
9工区:78.34%(2021年2月)
つまり、生活環境課は、補助金を申請する締切日の2021年3月末の1〜2か月前の時点で、1工区と4工区は工事が半分程度しか終わっておらず、問題の5工区に至っては1割程度しか進んでいなかったことを知っていた。
なぜなら、工事を監督する町職員が「工事月報」に確認印を押しているからだ。また、8工区については「0%」と記載され、書類上は工事がまったく進んでいなかったかにもかかわらず、実際の出来高を確認することなく、確認印を押していた。
8工区の業者が町に提出した「工事月報」。2021年1月の段階で工事出来高が「0%」と記載されていたが、担当の町職員は実際の進捗状況を確認することなく、確認印を押していた
生活環境課は大幅な工事の遅れが発生していることを知りながら、補助金の申請に間に合わせるために、うその「工事完成日」を申請書類に書き込んで、厚労省に1億円を超える補助金を交付させた。しかも、町は、契約で業者に義務づけているはずの月報の未提出分を業者に催促することもなく、補助金申請の書類提出に踏み切っていた。
荒木耕治町長は2021年12月7日の町議会12月定例会で、「口永良部島での実施で協力支援が受けにくい状況だったことに加え、新型コロナウイルス感染症の発生など予想できない事案が重なった」と釈明していた。しかし、「予想できない事案」ではなく、そもそも工事の進み具合をきちんと把握していなかったのだ。
補助金申請うそ記載問題で、町議会に報告する荒木耕治町長(2021年12月7日)
担当職員「業者に提出を催促しなかった」
生活環境課の矢野課長は、月報が適切に提出されていなかったことを踏まえ、「工事の管理が杜撰だったことは素直に認めたい」と話す。また、月報の提出がなかったり、途中で終わっていたりしたことを把握しながら、「業者に提出を催促しなかった」(担当職員)という。
今後、各業者に未提出分の工事月報を求めるかどうか、課内で検討するという。
この工事は同町の口永良部島の老朽化した水道設備を新しくするため、国の補助金を受けて2020年度に実施された。補助金を受ける条件として、2020年度中の2021年3月末日までに工事完成検査をして、すべての工事を終わらせることが定められていた。
だが、実際には期限内にすべての工事を終えることができず、町はうその「工事完成日」や「工事検査日」を報告して、国から補助金を受け取っていたことが2021年11月、屋久島ポストの取材で判明。その後、工事を終えていない業者に工事請負代金を前払いしていたことなどもわかり、荒木耕治町長が町議会に対して、その事実を認めて陳謝している。
町が国に提出した工事の「検査調書」。実際には工事が終わっていないにもかかわらず、工事完成日を2021年「3月19日」と記載。「3月26日」と書かれた工事検査日もうその日付だった
業者「実績報告は必ずしている」
町の公共工事を請け負っている町内の業者によると、町からの指示に従って、月報は「必ず提出している」という。工事の進捗状況を記入して毎月25日に町に提出し、出来高が「100%」になるまで報告しているという。今回の問題について、「工事が期限内に終わらなかったため、記録を残せなかったのではないか」と町の対応を疑問視する。