利用のない会社から架空領収書【旅費不正の構図】(2) 屋久島町出張旅費不正問題
航空券購入せず、旅行会社から「予約の領収書」
別に割引券を購入し、実際より高額な正規運賃を受給
(この連載は随時掲載します)
鹿児島県屋久島町の幹部らによる一連の出張旅費不正問題の実態を解明する連載「旅費不正の構図」。2回目は、そもそも利用もしていない民間の旅行会社の領収書を使って、旅費の精算を行なっていた事例を紹介します。
出張旅費不正問題を受けて、荒木耕治町長の辞職を求める横断幕の前を歩く岩川俊広議長(当時)=右から3人目。この後の臨時議会で、自身の旅費不正の引責で議長を辞任した(2019年1月10日、屋久島町議会)
構図:民間会社の関与
実際には航空券を買ってもいない旅行会社の領収書を利用した手口だ。民間の会社を間にはさみ、その社名が入った領収書を利用していた。前回の「正規運賃の領収書で作り出した差額【旅費不正の構図】(1)」で紹介した手口では、実際に利用した航空運賃より高額な正規運賃が記載された領収書で精算することで、「差額」を作り出していた。「差額」を利用する点は同様だが、今回はそもそも取引実態のない旅行会社の領収書を利用していた。
屋久島町議会の岩川俊広議長(当時)=現在は現職町議=のケースがこれに当たる。
岩川俊広議長(当時)が旅費精算書に添付した架空領収書。航空運賃「¥93,980」と記載れているが、この領収書を発行した旅行会社で、岩川議長は航空券を購入していなかった
事例:岩川議長(当時)の場合
岩川町議の場合、ポイントは二つある。
まず一つは、旅行会社で航空券を買ってもいないのに、その会社が発行した正規運賃の領収書を受け取り、旅費精算書に添付したことだ。お金のやり取りがないなかで、領収書だけが発行されたとすれば、それは旅行会社側の「協力」が必要となる。
もう一つは、その旅行会社以外で割引航空券を買って出張した後、旅費精算の際に架空領収書を添付して、その差額を着服していた点だ。旅行会社が発行した架空領収書には、割引航空運賃4万1300円より高い9万3980円の正規運賃が書かれており、その差額となる5万2680円を高く請求していた。
詳しくみていこう。
岩川町議は2019年5月27日~29日の予定で、東京へ出張した。目的は、全国町村議会の議長や副議長の研修会に参加するためだった。
岩川町議の出張記録によると、岩川町議は5月27日に屋久島空港から鹿児島空港を経由して、東京・羽田空港に到着。午後から研修に参加して東京に宿泊した。5月28日は終日の研修で、同じく東京に宿泊。5月29日は帰任日で、羽田空港から鹿児島空港を経由して屋久島空港に帰った。
その出張記録をもとに、岩川町議は5月30日に出張旅費を精算し、航空運賃や宿泊代などの総額13万2620円の旅費を確定させた。
岩川俊広議長(当時)が作成した旅費精算書の明細書。航空運賃が実際よりも倍以上の金額だった
ところが、実際の航空運賃は大きく違い、旅程の一部も変更されていた。
岩川町議は屋久島空港と羽田空港の往復航空運賃として、次の金額で精算した。
屋久島空港~鹿児島空港:7400円(離島割引運賃)
鹿児島空港~羽田空港:3万9590円(正規運賃)
羽田空港~鹿児島空港:3万9590円(正規運賃)
鹿児島空港~屋久島空港:7400円(離島割引運賃)
合計:9万3980円
しかし、実際の航空運賃と旅程は次の通りだった。
屋久島空港~鹿児島空港:7400円(離島割引運賃)
鹿児島空港~羽田空港:1万6950円(割引運賃)
羽田空港~鹿児島空港:1万6950円(割引運賃)
鹿児島市~屋久島:5800円(高速船離島割引運賃)
合計:4万7100円
以上を踏まえると、岩川町議が東京を往復するのに支払った運賃は4万7100円であり、旅費精算書に記載した9万3980円との差額である4万6880円を着服していた。
岩川俊広町議が町に旅費を返還する際に作成した精算書。航空運賃の金額が「¥93,980」から「¥41,300」に減額された
対応:「予約時に旅行会社が発行した領収書を添付」と釈明
この問題が2020年2月に発覚すると、岩川町議は報道取材に「予約した時に旅行会社が発行した領収書を添付した」と釈明。領収書を受け取った後に割引航空券を購入したが、そのまま「予約の領収書」で精算したと説明した。
だが、その後の取材で、精算書に添付された領収書を発行した旅行会社には、岩川町議に航空券を販売した記録が残っていないことが判明。あらためて取材を受けた岩川町議は、「予約の領収書」を受け取った経緯について、「いま刑事告発を受けているため、説明できない。すべて警察で話す」と回答を拒んだ。
そして、岩川町議は同年3月、この件を含めて複数の出張で不正な旅費精算があったとして、計7万9672円を町に返還した。しかし、架空領収書を受け取った経緯について、岩川町議が説明することはなかった。
旅行会社が岩川俊広議長(当時)に発行した航空運賃の領収書。購入していないのに、領収書だけを発行していた
現状:領収書発行の元社員とともに起訴猶予
旅費不正の疑いが複数あった岩川町議は2020年2月、住民から詐欺容疑などで刑事告発されていた。さらに、この件も加えて捜査が進み、鹿児島地方検察庁は10月に岩川町議らを起訴猶予の不起訴処分にした。岩川浩一副町長(当時)らの処分も含めて、地検は「容疑事実は認められたが、それぞれが全額を町に返還したことや、役職を辞任するなど一定の社会的制裁を受けている」と説明した。
また、岩川町議に架空領収書を渡したとされる旅行会社の元社員(不正発覚後に懲戒解雇)も5月、親会社の幹部から詐欺ほう助容疑で告発された。そして10月、岩川町議と同じ日に地検から起訴猶予の不起訴処分を受けた。
【メモ】
屋久島町の荒木耕治町長ら町幹部をめぐる出張旅費不正問題は2019年12月の町議会で発覚した。その後、一連の不正は岩川浩一副町長(当時)や岩川俊広議長(同)ら町役場と町議会の幹部4人に広がる刑事事件に発展。さらに、一般職員にまで不正が及んでいることが判明し、被害の総額は少なくとも約230万円になった。荒木町長は、一部の町議らが求める第三者委員会の調査は拒む一方、今年4月に町監査委員に対し監査を要請し、今月から本格的な監査が始まった。対象は2014年度~2019年度に航空機を利用して出張した退職者を含むすべての職員と町議で、その数は120人ほどの見込み。監査委員は今年度末の2022年3月の監査終了をめざしている。
岩川俊広町議が旅費を返還する際に荒木耕治町長に提出した文書。総額7万9672円を返還する内容だった
岩川俊広町議が弁護士に依頼して作成した旅費不正の一覧表。実際の航空運賃との差額が7万9672円となっている