損害1465万円 全額回収までは前途多難 屋久島町補助金不正事件
虚偽報告の代償 町は工事業者を提訴の方針だが・・・・・・
町に法的責任の可能性も
【上】鹿児島地裁の建物と法廷(裁判所ウェブサイトより)【下】屋久島町が国に提出した工事の検査調書
屋久島町民の公金から国に返還した補助金の損害は回収できるのか――。
町が水道工事で補助金を申請する際に虚偽の「工事完成日」などを報告し、国から補助金の返還命令を受けた責任を問う住民訴訟が2月8日に結審した。荒木耕治町長ら幹部の賠償責任については5月17日の判決で明らかになるが、町が勝訴したとしても、回収不能となっている約1465万円の損害は残ったままだ。町は「工事遅延を招いた業者の責任」だとして訴訟で賠償請求する方針だが、裁判所が業者の責任を認めるかどうかも見通せず、前途多難が予想される。
未完成なのに「すべての工事が終わった」
国から補助金の返還命令を受けたのは、町が2020年度に口永良部島で実施した水道工事だ。補助金を受給する要件は2021年3月までの工事完成で、町は「すべての工事が終わった」とする事業実績報告書を国に提出して、総額で約1億2000万円を受け取った。ところが、実際には一部の工事は未完成だったことが屋久島ポストの取材で発覚し、町の虚偽報告が判明。その結果、町は2022年3月に加算金を含めて約1668万円を町の一般会計から返還した。
屋久島町が国への報告書に添付した虚偽の工事検査調書。工事が未完成の段階で、「契約図書に基づき良好に施工されている(合格)」と記載していた
回収見込みは203万円のみ
その後、補助金の返還に至った法的責任について、町は「工事遅延を招いた業者にある」と主張し、国に返還した全額を6業者に請求。そのうち5業者は請求に応じ、今年3月までに約203万円が町に支払われる予定だが、最も工事が遅れた1業者は支払いを拒否しており、残りの約1465万円は回収のめどが立っていない。
住民訴訟で判明 職員が「独断」で虚偽報告の新事実
一方、昨年8月に提起された住民訴訟で、原告の住民は荒木町長らに補助金返還の法的責任があるとして、幹部3人の賠償責任をめぐり町側と争った。住民は虚偽報告を町役場が内々に把握したあとも、荒木町長らが適切な不正調査や国への報告をせず、約7カ月にわたって不正の事実を隠蔽、放置したなどと主張。それに対し町側は、担当職員が上司の決裁を受けずに公印を使い、国に「独断」で虚偽報告書を提出したことなどを理由に、町幹部に賠償責任はないと反論した。
住民訴訟の答弁書で、屋久島町は担当職員が上司の決裁を受けずに、虚偽報告書を「独断」で国に提出したことを初めて明らかにした
町議会 第三者調査の実施要請は必至
未回収の約1465万円について、町は住民訴訟の判決を踏まえて、損害賠償請求訴訟を提起するか否かを判断する方針だが、全額を回収するまでには課題は多い。
まず、住民訴訟で町側が勝訴したとしても、業者を提訴するには、町議会の承認が必要になる。これまで町は詳細な不正調査をしておらず、担当職員が上司の決裁を受けずに虚偽報告書を「独断」で提出したことなど、住民訴訟で初めて判明した事実が複数ある。だが、住民訴訟で町側は、職員や工事業者への聴取記録の証拠提出を拒んでおり、虚偽報告に至った経緯は解明されなかった。今後の町議会で、第三者による客観的な調査を求める声が出ることは必至で、町の方針どおりに提訴できるかどうかは不透明だ。
職員が虚偽報告した責任はどこに?
そして、町が業者を提訴できたとしても、補助金返還に至った法的責任について、裁判所が業者の賠償責任を認めるとは限らない。担当職員は一部の工事が未完成だったことを認識したうえで、虚偽の内容を記載した報告書を提出しており、町にも一定の法的責任があると判断される可能性がある。
回収不能なら全額を町民が負担
さらに、町が損害賠償請求訴訟で勝訴したとしても、業者から約1465万円を回収できるか否かも未知数だ。業者が賠償請求に応じない場合は、町が預貯金や資産などを差し押さえるために、裁判所に強制執行の申し立てをしなくてはならない。そして、業者が自己破産するなどして、差し押さえる財産がなければ、損害金を回収する術はなくなり、その全額を町民が負担することになる。
まずは5月17日にある住民訴訟の判決次第だが、いずれにしろ、いま一時的に屋久島町民が「立て替え」をしている約1465万円を回収するまで、荒木町長ら幹部の責任は続く。
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