町監査委員、虚偽領収書の旅費精算を再監査へ 屋久島町出張旅費不正問題
日高好作町議に航空会社の搭乗記録などを求める方針
虚偽領収書について説明を拒否する日高好作町議(2022年5月24日、屋久島町役場)
屋久島町議会の日高好作町議(65)が議長だった2016年に東京へ出張した際に、虚偽の領収書で航空運賃を受け取った問題をめぐり、町監査委員が日高町議の出張精算を再監査する方針を固めた。旅費精算書に記載された航空運賃について、日高町議が航空券の販売記録といった客観的な証拠を提出していないためで、航空会社が発行する搭乗記録などを求めるという。また、公務後に私的な家族旅行をしていたにもかかわらず、その旅行中も宿泊費や日当などを受け取っていた問題についても、併せて監査するとみられる。
再監査の方針は、屋久島ポストの取材(*1)に対し、代表監査委員の朝倉富美雄氏と町議会から監査委員に選出されている相良健一郎町議が明らかにした。
日高好作議長(当時)が旅費精算書に添付した虚偽の領収書。領収書を発行した旅行会社には航空券を販売した記録が残されていなかった
航空会社からチケット購入も「領収書をもらった記憶ない」
監査委員の説明などによると、日高町議は2016年5月29日~6月1日に東京へ出張した後に、屋久島と東京の往復航空券代として、屋久島と鹿児島間は2万1000円、鹿児島と東京間は2万7180円の計4万8180円となる領収書2枚を添付して旅費精算した。ところが、監査で領収書を発行した旅行会社に航空運賃を確認したところ、同社には日高町議に航空券を販売した記録が残されていなかった。一方、その当時に日高町議と一緒に出張した真辺万里町議(当時)については、鹿児島と東京の往復航空券を2万7180円で販売した記録が残されていたという。
それを受け、監査委員が日高町議に事情を聴いたところ、航空券は航空会社から購入したが、領収書をもらった記憶がないと説明。さらに、旅費精算書に添付した虚偽の領収書についても、旅行会社から受け取った記憶ないと証言したという。
真辺万里町議(当時)が旅費精算書に添付した航空券代の領収書。日高好作町議と同じ2万7180円と記載されており、旅行会社には同額で販売した記録が残されていた
同行町議への販売記録を根拠に「妥当な金額」
本来であれば、実際に購入した航空券代を証明する領収書などがない場合は、旅費精算で航空運賃を請求することはできない。それでは、なぜ監査委員は購入金額を証明できない航空運賃の受領を認めたのか。
監査委員によると、領収書なしの精算を認めたのは、日高町議が東京へ出張した事実が確認できたことに加え、鹿児島と東京間の航空運賃については、一緒に出張した真辺氏と同額の2万7180円を請求していたことが理由だ。屋久島と鹿児島間に関しては、離島割引で往復2万1000円なので、計4万8180円は「屋久島と東京の往復航空券代として妥当」と判断したという。
特典航空券利用の可能性を指摘、一転して再監査へ
その説明を受けて、屋久島ポストは「日高町議ではなく、一緒に出張した真辺氏の販売記録を根拠に旅費の精算を承認するのは、公金を支出する手続きとして問題はないのか」と質問。それに対し、朝倉代表監査委員は「東京に出張した事実があれば、その費用は払わなくてはいけない」と主張する一方、航空会社のマイルを使った無料の特典航空券などで出張した可能性を指摘されると、再監査で日高町議から航空会社が発行する搭乗記録などを求める方針を明らかにした。
再監査が実施されることについて、屋久島ポストは日高町議に電話とメールで取材を依頼したが、5月28日午前11時までに返信はない。
日高好作議長(当時)が町に提出した旅費精算書の一部。5月31日に東京から鹿児島空港に移動して同空港近くに宿泊し、6月1日に屋久島空港へ移動したと記載されているが、実際は私的な家族旅行で石川県を訪ねていた
家族旅行中の不正受給も監査か
問題の東京出張をめぐっては、虚偽領収書での精算に加え、日高町議が公務後に石川県への私的な家族旅行をしていたにもかかわらず、その事実を伏せた虚偽の旅費精算書を作成。家族旅行の期間も、宿泊費や日当など計1万2200円を受給していたことが屋久島ポストの取材で明らかになっている。
近く実施される再監査では、その家族旅行中の不正受給についても調査されるとみられる。
日高好作議長(当時)が町に提出した旅費精算書の一部。私的な家族旅行中なのにもかかわらず、宿泊費8000円、日当2200円、交通費2000円の計1万2200円を請求していた
*1) 取材日は2022年5月24日