遺族、時間外労働が月80時間超で国の「過労死ライン」に該当 屋久島町営牧場 過重労働死訴訟
町、時間外労働の月平均「最大27時間」➡ 遺族、町の指示で勤務記録を週40時間以内に修正「実態を反映していない」
公務災害認定、町は「主体的に勤務時間を管理していなかった」
【上左】屋久島町営長峰牧場の衛星写真(Google Earth より)【上右】鹿児島地裁(裁判所ウェブサイトより)【下】屋久島町役場
2019年8月に屋久島町営の長峰牧場で町職員だった田代健さん(当時49)が公務中に死亡し、過重労働で心筋梗塞を発症したことによる公務災害と認定されたことを受けて、田代さんの遺族が屋久島町(荒木耕治町長)を相手取り、慰謝料など約7000万円の損害賠償を求めた民事訴訟――。
この訴訟の第5回口頭弁論が10月8日に開かれ、遺族側は田代さんが亡くなる前の6カ月間における時間外労働の平均時間が、国の基準である「過労死ライン」(発症前2~6カ月間)に該当する1カ月当たり80時間を超えていたと主張した。
これまで町は、同期間における時間外労働時間の1カ月当たりの平均は「最大27時間」と主張。それに対し遺族側は、町が根拠とする作業日報は、町の指示で週40時間の労働に収まるように記載されたもので、田代さんによる労働の「実態を反映したものとはいえない」と反論した。
元同僚職員、死亡前6カ月間の労働時間を推計
遺族側が鹿児島地裁に提出した準備書面によると、田代さんが町に提出していた作業日報は、担当係長による「雇用契約書で定められた週40時間の正規勤務時間の範囲に収まるように」との指示で、実際の労働時間とは関係なく、「1日当たり一律6時間半」と記載したものだった。一方で、作業日報に書いた「作業内容」については、その日に行った実際の作業を記録したもので、修正は一切していなかった。
それを踏まえ、町が保管する作業日報の「作業内容」に従って、長峰牧場で一緒に勤務していた元同僚職員が、田代さんが亡くなる前の6カ月間における1日ごとの労働時間を推計。その結果、1カ月ごとの「時間外労働時間」と「1カ月当たりの時間外労働の平均時間」は、次のとおりとなった。
【時間外労働時間】
1カ月前:89時間30分
2カ月前:61時間00分
3カ月前:90時間30分
4カ月前:88時間30分
5カ月前:83時間30分
6カ月前:77時間30分
【1カ月当たりの時間外労働の平均時間】
2カ月前:75時間15分
3カ月前:80時間20分
4カ月前:82時間52分
5カ月前:83時間18分
6カ月前:82時間20分
この推計結果を受けて、遺族側は田代さんによる時間外労働の1カ月当たりの平均時間は、最大で83時間18分だったと指摘。これを厚生労働省が通達した「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」(過労死ライン)に照らすと、「発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合」に該当すると主張した。
町、過労死ラインの「水準に足りる時間外労働時間」ではない
その一方、これまで町は「町の保有する作業日報については、正にその当時において作成されたものである」「作業日報を改ざんするよう指示した事実などない」として、その内容は「十分信用できる」と指摘。さらに、町に残された作業日報を根拠に「時間外労働時間は最大34時間00分であり、平均で見ても最大27時間に止まっている」として、国の過労死ラインが定める「水準に足りる時間外労働時間自体が認められない」と主張していた。
町が保管する作業日報の時間外労働時間は次のとおり。
【時間外労働時間】
1カ月前:22時間30分
2カ月前:21時間00分
3カ月前:30時間00分
4カ月前:34時間00分
5カ月前:8時間00分
6カ月前:0時間00分
【1カ月当たりの時間外労働の平均時間】
2カ月前:21時間45分
3カ月前:24時間30分
4カ月前:26時間52分
5カ月前:23時間06分
6カ月前:19時間15分
地方公務員災害補償基金、町の勤務管理体制は「現場の職員任せ」
屋久島町の勤務管理体制については、地方公務員災害補償基金の鹿児島県支部(支部長:塩田康一・鹿児島県知事)が2023年2月に田代さんの公務災害を認定した際に、「時間外勤務が生じないことが所与の前提となっており、また、時間外勤務時間を含めた業務配分を現場の職員に任せ、そもそも業務命令権者として主体的に勤務時間を管理する体制になっていなかった」と判断している。
次回の口頭弁論は12月17日に開かれる。
厚生労働省「STOP 過労死」ウェブサイト