きょう創刊1周年 市民メディア「屋久島ポスト」

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不正なき屋久島町政をめざして 読者と共に
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創刊1周年の前夜に見られた皆既月食で赤銅色になった月。下左には月に重なる直前の天王星が見える(2022年11月8日夜)

 屋久島町は私たち町民の公金を正しく使っているのか――。

 そんな疑問から市民メディア「屋久島ポスト」を創刊して1周年を迎えました。

 きっかけは町幹部らの出張旅費不正問題です。荒木耕治町長や副町長、議長らが計240万円もの旅費を着服していたのに、役場と議会は調査を頑なに拒否。不正を放置する町政を改善するために、町を監視する調査報道を始めました。

創刊1カ月
補助金不正請求問題の取材で荒木耕治町長(左)に取材する屋久島ポストの鹿島幹男代表(2021年12月1日、屋久島空港)

絶えない不正と公金の無駄づかい

 最初の取材では、町が水道工事の補助金を受ける際に、工事が未完成の段階で「完成」したと国に虚偽報告した問題を報道。国は町に約1668万円の返還命令を出しました。

 旅費不正問題では、過去6年間の出張記録を詳細に調査し、特別監査の必要性を訴えました。その結果、新たに町議や元会計課長らが虚偽領収書で不正精算していたことが判明しました。

 さらに町長交際費を調べると、過去5年間に約370万円分の贈答を国会議員らに続けていたことが判明。1件で10万円分の高級焼酎を贈答した例もあり、議会では高額な贈答の違法性を指摘する意見も出されました。

 わずか1年の取材で、これだけ次々と公金に関わる問題が見つかるのは、屋久島町の杜撰な行政運営が原因であることは明らかです。

 しかし、度重なる不正や公金の問題について、役場と議会は無責任な態度を続けています。補助金不正で虚偽報告をしたのは町なのに、工事が遅れた業者の責任だと主張。旅費不正に使われた虚偽領収書については、議会が不正調査の百条委員会設置案を実に5回も否決しました。

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工事が未完成の段階で、虚偽の工事完成日を記載した検査調書。この文書が証拠となり、補助金不正請求事件の報道が始まった

町幹部を追及する住民訴訟

 それに対し、住民訴訟で町幹部の責任を追及する動きが出ています。国に返還した約1668万円を荒木町長らに賠償請求しているほか、交際費の返還を求める訴訟も提起される見込みです。

 町の不正や公金の無駄づかいをなくすためには、役場が公にしない事実を明らかにする報道が必要不可欠です。より良い町づくりをめざし、これからも屋久島ポストは町民の皆さまに寄り添った取材を続けていきます。

■創刊1周年を記念してPDF紙面

 創刊1周年を記念して、屋久島ポストのPDF紙面を作成しました。読者の皆さまの周りに、インターネットで屋久島ポストをご覧になられない方がおられましたら、このPDF紙面をプリントして、ご紹介いただければ幸いです。以下の紙面写真をクリックまたはタップするとPDFファイルがダウンロードできます。

PDF紙面

創刊1周年を記念した屋久島ポストのPDF紙面

■屋久島ポスト報道記録

202111屋久島町が口永良部島の水道工事で補助金を申請する際に虚偽の報告書を国に提出していたことが発覚。報道を受けて町が国に虚偽報告の事実を報告。

12補助金不正で議会が水道工事の関連予算を不認定。

20222岩山鶴美町議が自身で経営する賃貸アパートの廃材を不法投棄して焼却していたことが発覚。報道を受けて町民が刑事告発。
不法投棄
岩山鶴美町議が不法投棄した廃材(左)と焼却跡


荒木耕治町長が公務出張で航空会社のマイルを大量に貯めていたことが発覚。報道を受けて、町は公務出張でのマイル加算を禁止。

3補助金不正で国が町に対して約1668万円の返還を命令。

4出張旅費不正の監査で、日高好作町議と桑原幸夫・元会計課長が虚偽領収書で不正精算していたことが発覚。

5補助金不正で住民監査請求。

6表現の自由や国民主権の促進などに貢献した活動を顕彰する日隅一雄・情報流通促進賞の奨励賞を屋久島ポストが受賞。
南日本新聞記事4
屋久島ポストの受賞について報じた南日本新聞の記事


出張旅費不正で虚偽領収書の不正調査をする百条委員会設置案が議会で4回目の否決。

8補助金不正で住民訴訟を提起。町長ら幹部3人に約1668万円の賠償を求める。

荒木町長の交際費問題が発覚。国会議員らへの贈答で、過去5年間に約370万円を支出。

9町長交際費問題で住民監査請求。

出張旅費不正で虚偽領収書の調査をする百条委員会設置案が議会で5回目の否決。

11町長交際費問題で住民訴訟を提起へ。

国会議員らに5年で贈答370万円 焼酎は計900

 荒木町長が交際費で過去5年間に約370万分の贈答を国会議員らに続けていたことが8月に判明しました。贈答品は焼酎900本やイセエビ、タンカンなど。特に多いのは森山裕衆院議員で、少なくとも50万円分の高級焼酎や魚介類などを贈っていました。

 荒木町長は国会議員のお陰で有利な交付金や地方債の恩恵が受けられたとして、贈答で「町に大きなメリットがあった」と主張。一方、国会議員側は「町長個人の贈答」「町産品のPR用」との認識で、両者の見解が大きく食い違っています。

 9月議会では、公金による一連の贈答について、違法性を疑う指摘が出ましたが、荒木町長は「妥当」だと答弁。それを受け、交際費の返還を求める住民監査請求が出されましたが、すべて退けられたため、近く住民訴訟が提起される見込みです。
無何有など
荒木耕治町長が国会議員らに贈答した屋久島産の焼酎

虚偽領収書を放置 議会は不正調査を5回否決

 荒木町長から始まった一連の出張旅費不正問題は、発覚から丸3年になっても未解決のままです。取材では少なくとも15件の出張で、実費より高額の航空運賃が記載された虚偽領収書が不正精算に使われていたことが判明。町の監査では3月、新たに現職町議や元会計課長の不正精算も明らかになりました。

 しかし、荒木町長は不正調査を拒み続け、議会は不正調査の百条委員会設置案を5回にわたって否決。町と議会が一丸となり、虚偽領収書の問題をうやむやのまま終わらせようとしています。
領収書
日高好作、岩川俊広の両町議が不正精算で使った虚偽領収書。いずれも航空券を購入していないにもかかわらず、旅行会社から領収書だけを発行してもらっていた

■屋久島ポスト編集委員会
カラー題字)一周年要②
 世界自然遺産の屋久島で暮らす住民有志が協力して、屋久島町の行政や社会の問題を中心に記事をネット配信。情報公開制度で開示された町の行政文書を基にして、不正のない町政を実現するため、市民による市民のための調査報道を続けています。

共同代表・鹿島幹男 武田 剛

yakushima.post@protonmail.com

■屋久島ポストに関する記事一覧

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  1. 菅沼栄一郎

    足場はしっかり築きましたね。全国的にもかなりの存在感。もはや屋久島ポスト無視した町政運営はあり得ないでしょう。屋久島の人たちも、自分たちもしっかり参加しなければ、という意識がむくむくと膨らんでいるのが、東京からも見えますよ

  2. 安房よかにせ

    屋久島ポストさん、創刊1周年おめでとうございます。
    昨今の権力に忖度する我が国のマスメディア及びローカルメディアの体たらくぶりは、ひどいものがあります。
    少し古くなりましたが、フランスに本部を置く国際的なジャーナリストのNGO「国境なき記者団」が5月3日に発表した2022年の「報道の自由度ランキング」で、世界の180の国や地域のうち日本は71位と昨年から順位を4つ下げたという報道がありました。
    民主党政権時代の2010年には11位だったそうですから、この凋落ぶりには愕然とさせられます。
    ところで、ジャーナリスト(Journalist)という職業は、自社記事が特オチにならないよう腐心するのではなく、特ダネをとって権力の腐敗・不正を国民に知らせる監視役が本来の業務だと思うのですが、昨今の報道現場は、どうもそうではないのが気がかりです。
    その中にあって、屋久島ポストの住民目線に立った調査報道は、一際存在感を発揮していると思います。
    これからも色々ご苦労があるかと思いますが、体には十分気を付けて頑張ってください。陰ながら応援しています。

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