公取委 「おかしいこと」でもすぐには動かない【検証・岩山討論】(7) 屋久島町新ごみ処理施設

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ごみのポイ捨て罰金提案も 町に断られた岩山町議  入札の疑念には「おかしいことがあれば、公取委がやるべき」の自己矛盾

公取委②

【上】公正取引委員会のウェブサイト【下】屋久島町議会の予算審議で、個人攻撃をする討論をしたとして、厳重注意を受けた岩山鶴美町議(2023年3月24日、同町議会YouTubeチャンネルより)
 

 屋久島町の新ごみ処理施設の建設費をめぐる予算審議で、同町議会の岩山鶴美町議は、自分とは異なる意見や行動を名指しで否定、批判する「個人攻撃」をしたとして、石田尾茂樹議長から厳重注意を受けた。

   町議会の存在意義は、町民からの多種多様な意見を集めて議論することだが、今回の岩山町議の討論は、言論の府である屋久島町議会を否定するものといえる。

   この問題を検証する連載の7回目は、岩山町議が挙げた「三つの観点」のうち、同施設の予算案に反対した町議が公正取引委員会に相談し、独自に調査していることを疑問視した「岩山討論」について考えたい。

    

 公正取引委員会は内閣府の外局として設置された国の調査機関で、自由で公正な競争を促し、民主的な国民経済の発達をめざすために設置されている。公共事業の談合といった独占禁止法などに違反する行為を監視するのが大きな役割で、新しいところでは、東京五輪・パラリンピックの運営業務をめぐる談合事件で、大会組織委員会の元幹部や関係する企業を刑事告発するなどの成果をあげている。

広く情報提供を呼びかける公取委

 その公取委のウェブサイトを見ると、トップページの右上に「相談・申告・情報提供・手続等窓口」の表示があり、濃い青地に白文字で示された他の項目とは差別化する形で、黄緑色の枠に黒文字で目立つように記載されている。それをクリックして、さらに「申告」の欄を見ると、次の案内文が出てきた。

「独占禁止法に違反する事実があると思うときは、だれでも、公正取引委員会にその事実を報告し、適当な措置を採るよう求めることができます。これは、違反行為の被害者でも一般消費者でも、違反行為を発見した人であればだれでもよいのです」

 つまり、一般競争入札などで公正な競争が行われていないと思われる事案があれば、誰でも公取委に申告や相談ができるということである。

公取委

公正取引委員会のウェブサイトのトップページ

公取委、新ごみ処理施設の入札を疑問視

 今回の予算審議で問題となったのは、同施設の建設業者を決める一般競争入札で、予定価格が事前公表されていたにもかかわらず、参加した2社のうち1社が予定価格を15億円上回る金額を提示して、意図的に無効となる入札をしたことだ。その結果、もう1社が価格競争をすることなく落札して、予定価格とほぼ同額となる244870万円の建設費が決まった。

 そこで、この入札を疑問視した真辺真紀町議が公取委に相談したところ、「競争が働いたと言い切れない」「町は入札業者に事情を聴くべき」との見解が示されたため、町に対して業者への聴き取り調査を要望。しかし、町が予算審議までに聴き取りをしないため、「疑念が払拭されていない」として、複数の議員が予算案に反対したのである。

町議が独自に動くのはおかしいのか?

 それに対して、岩山町議はこう反論した。

「真辺(真紀)議員、(渡辺)千護議員、小脇(淳智郎)議員は公正取引委員会に電話をかけたそうですけれども、違反行為を取り締まる公正取引委員会であれば調査に入るんではないでしょうか」

「あなた方が電話をして、さらに動いているということですけれども、おかしいことがあれば、公正取引委員会がやるべきではないですか」

 要するに、相談したのはいいけれど、それでも公取委が動いていないのであれば、今回の一般競争入札には何も問題はないということだ。

 だが、公取委は入札の競争性を疑問視して、「町は入札業者に事情を聴くべき」と言っている。そして、いくら求めても、その聴き取りを町が一向にしないから、予算案に反対して「疑念が払拭されていない」と主張することは、何も問題がないことだ。さらには、その疑念を払拭するために、町議が独自に調査をすることは、行政監視の責務を担った町議会議員として当然の行為であり、むしろ、何も動かない方が責められるべきである。

警察もすぐには動かない

 わかりやすい例えで言うと、何か犯罪行為の疑いが
あるときに、警察に相談に行って、すぐに対応してもらえることは、そう多くはない。相談者が証拠や証言を集めて、何度か警察署に足を運ぶうちに、「これは犯罪の可能性が高い」と思ってもらえて初めて、警察が捜査するのである。

 それは公取委もまったく同じで、真辺町議の相談は初めの一歩であり、その後の経過次第では、本当に公取委が動く可能性もある。それにもかかわらず、たった一度の相談で公取委が動かないからといって、その入札に何も問題がないと断ずる岩山町議の討論は、あまりにも性急であり、公益通報や刑事告発といった制度の趣旨をまったく理解していないと言わざるを得ない。

 極論すれば、目の前で小さな火事が起きているのに、「消火活動は消防署がやる仕事だから」と言って、そのまま放置するようなものである。

初めに動くべきは町議を含む屋久島町民

 かつて、岩山町議は町議会の一般質問で、タバコの吸い殻やペットボルトなどを町中で捨てる町民や観光客を批判し、ごみの「ポイ捨て」に罰金を科する条例の制定を求めたが、荒木耕治町長がその提案に応じなかったことがある。この岩山町議の提案について、今回の「岩山討論」を踏まえて考えると、次のような指摘を受けることになりはしないか。

「岩山町議がごみのポ捨てを批判して、さらに罰金を科する条例の制定を町長に求めているということですけれども、おかしいことがあれば、屋久島町がやるべきではないですか」

 「ごみのポイ捨て」と「一般競争入札の疑念」に対する対応の違いは、岩山町議の自己矛盾ともいえる。だが、いずれについても、まず初めに動くべきは町役場や公取委ではなく、その問題に気づいた町議を含む屋久島町民であることは言うまでもない。

【動画】屋久島町議会の予算審議で、特定の個人を攻撃する討論をしたとして、議長から厳重注意を受けた岩山鶴美町議(2023年3月24日、屋久島町議会、同町議会YouTubeチャンネルより)


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  1. 有権者1

    一連を読み直しました。
    根本的に岩山議員は事の経過も全く不理解のままの発言ですね。
    勘違いどころか本質を理解出来ないから始末が悪い。
    恐らく今後も改善は望み薄でしょう。
    果たして御本人はどう思ってるか知りたいです。

  2. 町民

    県外業者の入札なんて形だけの入札、それをおかしいと思わない役場に議員、はっきり言ってまともな議員とかいるの?

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