【詳報】高額贈答の大半、支出の違法性を判断せず却下 屋久島町長交際費・住民訴訟

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住民訴訟 前提要件の住民監査「請求期間1年の徒過で不適法」

原告住民「提訴で高額贈答なくなり 目的は達成」
判決
【上】鹿児島地裁の外観と法廷(裁判所ウェブサイトより)【下】屋久島町の荒木耕治町長が国会議員に贈答していた高級焼酎「三岳原酒」


 屋久島町の荒木耕治町長が交際費で国会議員らに高額な贈答をしたのは違法な支出だとして、同町の住民が町を相手取り、荒木町長に贈答で使った約200万円を賠償請求するよう求めた住民訴訟は、その大半の訴えに対して、支出の違法性を判断することなく請求が却下された。訴訟の前提要件となる住民監査請求が、交際費の各支出から1年以上を過ぎて請求されたことを踏まえ、法が定める「監査請求期間を徒過しており、不適法」と判断された――。

1件で焼酎3610万円支出も法的判断せず

 鹿児島地裁(窪田俊秀裁判長)35日、原告の住民が損害賠償を求めた1927588(贈答56件分)のうち、1734895(50件分)を「監査請求期間の徒過」を理由に請求を却下した。そのなかには、1件の贈答で高級焼酎を36本贈り、約10万円を支出したケースもあったが、贈答の支出に対する法的な判断には踏み込まなかった。

国会議員の当選祝いでも「社会通念上儀礼の範囲」

 一方、適法な住民監査請求を経た残りの192693(6件分)については、「社会通念上儀礼の範囲を逸脱したものということはできない」として、支出の違法性を否定。その贈答が当選祝いであっても、国会議員との信頼関係を維持増進するためには認められるとの判断を示し、住民の請求を棄却した。

森山衆院議員への高額贈答に「疑念の余地あり」

 この訴訟で住民が最も問題視したのは、特定の国会議員に対して「集中的かつ継続的」に行われていた高額贈答だった。そのなかでも、自民党の森山裕衆院議員(鹿児島4)への贈答は突出しており、20172021年度の5年間で、高級焼酎180本や魚介類のイセエビなどを贈り、少なくとも約60万円を支出していた。

 これら森山衆院議員に対する贈答について、その大半は「監査請求期間の徒過」を理由に法的な判断が示されなかった。だが、判決理由のなかでは、20195月に焼酎36本を贈って支出した92520円や、20212~5月に焼酎30本や魚介類などを3件続けて贈って支出した計96621円について、「これらの贈答が社会通念上儀礼の範囲内のものであるかについては疑問の余地がある」と指摘された。

知人社長への贈答38万円「社長を私的に優遇する趣旨」との疑念も

 また住民は、町が多額の寄付を受けた返礼として、荒木町長が知人社長に焼酎や屋久杉工芸品などを贈って支出した約38万円についても違法性を主張したが、判決では森山衆院議員への贈答と同様に、その大半に対して法的な判断が示されなかった。

 しかし、判決理由のなかでは、「社長に対する贈答が同社長と荒木との私的な関係を背景に同社長を私的に優遇する趣旨のものではないか」という疑念を抱かせると指摘。さらに、「公金の支出に対する世間の厳しい目やコンプライアンスの観点も踏まえ、住民から疑念を抱かれるような交際費の支出はなされるべきではない」とする住民の主張を受けて、被告の屋久島町として「真摯に受け止めるべき点が少なくない」との見解が示された。

住民「目的は裁判ではなく、庶民感覚を踏まえた交際費に」

 すべての請求が却下および棄却されたことについて、原告の住民は取材に「とても残念だが、この住民訴訟が始まってから、裁判で指摘した高額な贈答は一切なくなっており、実質的に町長は交際費の支出を見直したと受け止めている」と指摘。控訴を含めた今後については、「本来の目的は裁判ではなく、交際費の支出を庶民感覚で納得できる金額にすることなので、高額贈答がなくなった今の状況が続けば、目的は達成できたと考えている」としている。

荒木町長にはコメントを要請中

 一方、屋久島ポストは3月6日午前8時半、町総務課を通じて荒木町長にコメントを求めたが、同日午後3時半までに返信がないため、連絡が届き次第で記事を更新する。

 判決文に掲載された交際費支出の一覧は以下のとおり。

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  1. 残念ですが、、、

    住民訴訟に勝利する道はなかなか険しいですね。
    しかしながら、その為に行政執行が改まったり、見直されたり効果は如実に現れています。
    最近、交際費の支出が格段に無くなった事が一つの証明でも有ります。
    屋久島ポストの綿密な取材と、それを支える良識派の議員諸氏にエールを送りたい。

  2. 安房よかにせ

     とても分かりやすく続報を書いていただき、ありがとうございます。
     今回の判決の残念だったところは、<訴訟の前提要件となる住民監査請求が、交際費の各支出から1年以上を過ぎて請求されたことを踏まえ、法が定める監査請求期間を徒過しており、不適法>などと言って、原告の訴えに対し、まともに法的判断をしていないことに尽きると思います。
     判決後、原告の方が「とても残念だが、この住民訴訟が始まってから、裁判で指摘した高額な贈答は一切なくなっており、実質的に町長は交際費の支出を見直したと受け止めている」と述べていますが、その内訳は下記のとおりです。
    ● 年度別「町長交際費」支出額(➤屋久島町公式ウェブサイト「交際費の公表」から)
    2021(令和3)年度 683,441円
    2022(令和4)年度 303,560円
    2023(令和5)年度 143,070円(令和6年1月支出分まで)
    詳細については、下記サイトをご覧ください。↓
    http://www.town.yakushima.kagoshima.jp/mayor/kousaihi/
    勇気ある原告の方に次の言葉を贈り、私のコメントを閉じたいと思います。
    「行動は言葉よりも雄弁である」

  3. 藤田

    島に限らず地方はどこも、監視がない中での活動、素晴らしい👍

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