【視点】屋久島町長、嘘の代償で135万円の賠償責任/屋久島ポスト
町、工事未完成で「完成」と国に虚偽報告 → 荒木町長、虚偽報告の事実を国に伝えず補助金を不正受給

【左上、左下、下中】最高裁、鹿児島地裁、福岡高裁宮崎支部=いずれも裁判所ウェブサイトより【右】国への虚偽報告について取材に応じる屋久島町の荒木耕治町長=2021年12月1日、屋久島空港
なぜ、屋久島町の荒木耕治町長は135万円の賠償金を町に納めなくてはならないのか?
水道工事の補助金不正請求事件をめぐる住民訴訟で、荒木町長の賠償責任が認められたことを知って、多くの屋久島町民が疑問に思ったに違いない。実際に工事を管理していたのは町の課長や職員であり、実務に携わっていない荒木町長に何の責任があるのかと。
いろいろな背景や理由があるのだが、ひと言で説明すると、荒木町長が国に本当のことを言わずに、長期間にわたって黙っていたからである。実際には工事が終わっていないのに、「すべての工事が終わった」と嘘の報告を国にしていたにもかかわらず、荒木町長は国に何も言わないまま、国庫から補助金を受け取ってしまった。そして、不正に補助金を受け取っていた期間に発生した加算金135万円について、荒木町長に賠償責任があると認められたのである。
虚偽報告の事実、長期間にわたって放置
それでは、荒木町長はどうするべきだったのか?
答えは簡単だ。2021年4月12日に初めて虚偽報告の事実を知った段階で、荒木町長は速やかにその事実を国に報告するべきだった。そうすれば、国から補助金が町に支払われることはなく、その結果として、加算金も発生しなかったということである。
ところが、荒木町長は国に何も報告しないまま、同年4月19日に国から補助金を受け取ってしまった。その後、町議会で虚偽報告を疑う指摘を受けたが、荒木町長ら町幹部は真正面から取り合うことなく、そのまま放置を続けた。そして、同年11月に屋久島ポストが虚偽報告の事実を報じたことをきっかけにして、2022年3月に国が約1668万円(一部補助金と加算金)の返還命令を町に出したのである。
嘘の報告で国から補助金をもらっていたのであれば、その事実を知った段階で、荒木町長が国に報告するのは当然のことだった。だが、荒木町長はそれを怠り、長期間にわたって虚偽報告の事実を放置した。その意図があったかどうかは別にして、結果的に虚偽報告の事実を隠蔽していたと言われても、致し方がない状況だったといえる。
嘘がまかり通る地方自治体
出張旅費不正精算事件でも同じだったが、町政運営で嘘があっても、その事実が広く知られなければ、本当のことを言う必要はないと、荒木町長は思っているのではないか。普通運賃の航空券を払い戻し、格安の高齢者割引で買い直して約200万円もの差額を着服していたのに、荒木町長は「高齢者割引は使ったことがない」などと、町議会や取材で嘘をつき続けた。
つまり、嘘がバレなければ、本当のことを言う必要はないということである。
しかし、これほどまでに嘘がまかり通っている地方自治体は、とても珍しいのではないか。それも、町長が率先して嘘をついているとなると、その首長を選んでいる町民の責任も、極めて大きいと言わざるを得ない。
鹿児島地裁、福岡高裁宮崎支部、そして最高裁。ここまで多くの司法判断を仰がないと、荒木町長は自身の嘘を認められないのか。せめて最高裁に上告することなく、高裁判決を受け入れて、速やかに賠償責任を全うしてほしかった。