【Key Word】刑事告発:公務員に課せられた法的義務 屋久島町補助金不正・住民訴訟
職員の違法行為 見て見ぬふり続ける町役場
身内だけの不正調査で告発もせず
屋久島町が国に提出した虚偽の検査調書。工事が未完成の段階で、すべての工事が終わったと報告した
屋久島町が水道工事で補助金を申請する際に虚偽の「工事完成日」などを報告し、国から補助金1668万円の返還命令を受けたのは町幹部の責任だとして、町に対して荒木耕治町長ら幹部3人に損害賠償を命令するように町民が求めた住民訴訟――。町が鹿児島地裁に提出した答弁書には、担当職員が虚偽の報告書などを作成した経緯が詳細に記載されている。
工事管理のミスを虚偽公文書で隠す職員
国に事業実績報告書を出すにあたって、工事が終わっていないにもかかわらず、担当職員は幹部の決裁を受けることなく、工事が完成したとする虚偽の報告書を「独断」で提出した。
さらに工事代金を業者に支払う際には、工事が未完成であることを幹部に説明することなく、約2300万円の支出命令書を作成したという。
いずれの行為も、各種法令に違反することは明らかで、刑法については「公文書偽造」や「虚偽公文書作成」に該当する違法行為だ。職員たちは虚偽の公文書を作成することで、工事管理を誤った自分たちのミスを隠す結果となっており、公務員としては決して許されない行為である。
工事が未完成の段階で出された業者の請求書(左)。2021年5月6日付で請求され、約2300万円を支払う支出命令書(右)が即日で起票された
第三者的な不正調査をしない町
ところが、これだけ重大な違法行為が疑われるにもかかわらず、屋久島町は職員たちの処分を一切していない。さらには、第三者的な不正調査もしておらず、答弁書で記載した違法行為についても、町議会ではまったく説明してこなかった。
これでは、屋久島町は「無法地帯」も同然である。だが地方自治体として、果たして、こんな無責任な対応が許されるのだろうか。
そこで刑事訴訟法を調べると、次のような条文がある。
<第二百三十九条 何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。
② 官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。>
つまり、役場内で業務上の違法行為があった場合は、刑事告発をすることが法的に義務づけられているということだ。ただ、すべての違法行為が告発されるわけではなく、より悪質なケースが対象となるという。
「身内の専門家」が法的な判断
それでは、悪質であるか否かは、どう判断するのか。
当然だが、その前提として不正調査は欠かすことができない。それも身内だけで調べるのではなく、法的な専門家を交えた第三者的な調査が必要になる。
ところが、屋久島町はその第三者的な不正調査を一切していない。
法的な判断をするにあたり、かつて弁護士をしていた河野通孝・法務事務専門員に指南を受けているが、河野氏は荒木町長の判断で雇用された非常勤の町職員だ。住民訴訟では町の「指定代理人」として、弁護士と同様の役割を果たしており、屋久島町としては「身内中の身内」である。さらには、現在は弁護士の登録をしていないので、弁護士として社会的な責任を果たすこともできない。
それゆえ、たとえ河野氏が法律の専門家であっても、町の職員である以上は、客観的かつ第三者的な判断をしたことには到底ならない。
不正調査も告発もしない町の無責任
税金を不正に支出した違法行為が疑われても、町は第三者的な調査を一切していない。その結果として、法的に定められた刑事告発をするか否かの判断もできない。
これでは、屋久島町は役場内の違法行為に対して、見て見ぬふりを続けていることになる。
町幹部による一連の出張旅費不正問題でも、まったく同じ対応が続いている。荒木町長は第三者的な不正調査を頑なに拒否し、町議会も不正調査の百条委員会設置案を5回も否決。そして、住民が「最後の手段」として刑事告発をして、司法の判断を仰ぐ結果となっている。
法的に定められた刑事告発はおろか、その判断をするための不正調査もしない。それほど、いまの屋久島町は無責任な状況にある。
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