「一般的なお付き合い」で贈答10万円の金銭感覚【日高豊副町長インタビュー】(3) 屋久島町長交際費問題
「何も具体的な目的がない」高額贈答に違法性の疑い

交際費問題について議会答弁する屋久島町の日高豊副町長(中央)。手前右は荒木耕治町長(2022年9月13日、屋久島町議会)
屋久島町の荒木耕治町長が過去5年間に約370万円分の贈答品を国会議員らに贈っていた問題をめぐり、高額な支出や不透明な贈答理由に対して、町議会や町民から疑問の声が上がっている。それを受け、屋久島ポストは交際費について町の認識を尋ねるため、交際費の支出を決裁している日高豊副町長にインタビュー取材をして、その主なやり取りを紹介している。
3回目となる今回は、一連の荒木町長による贈答の支出が、地方自治法の「普通地方公共団体の支出は、債権者のためでなければ、これをすることができない」(232条の5)という規定に違反するのではないかとする疑問に対して、日高副町長の主張を伝える。
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将来的な便宜に期待する贈答
町長交際費を支出する理由として、日高副町長は9月議会一般質問の答弁で、「町益を確保するため」と明言した。それでは副町長が主張する「町益」とは何なのかを尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「個々にこれが町益というものではない。全体として町の利益になればいいと思っている」
贈答の結果として過疎法の対象地域になり、有利な地方債で町の財政が助けられたと力説していたのに、手の平を返したように曖昧な回答である。つまりは、これといった具体的な目的があるわけではなく、将来的に何か便宜を受けられるかもしれないという期待を込めて、贈答で国家議員らと「信頼関係」を築いているということである。
地方自治法に反する違法支出の可能性
そうなると、交際費を含めた一般経費の支出について定めた地方自治法232条の5に触れる可能性が出てくる。同法の条文を見ると、「普通地方公共団体の支出は、債権者のためでなければ、これをすることができない」とある。これは、町のために何か具体的な行為をした相手に対してのみ、公金から経費を支出できるということだ。ほかの地方自治体の例では、市町村長が訪問先へ手土産を持参したり、訪問を受けた相手に特産品を渡したりしている。それも「社会通念上妥当と認められる額」に相当すると思われる、3000~4000円ほどの贈答である。

2021年(令和3年)11月に鹿児島市長が支出した市長交際費の記録。来訪者に対して3000円程度の贈答をして、相手先の個人名をすべて公表している(鹿児島市ウェブサイトより)
町長と副町長の異常な金銭感覚
その一方で、荒木町長の贈答は桁違いに高額だ。1回に数万円~10万円のケースが数多くあり、町長が懇意にしている森山裕衆院議員(鹿児島4区)には、5年間で少なくとも約50万円分の焼酎や魚介類などを贈っている。さらには、贈答の支出を記録した「交際費使用伺い」の文書には贈答の理由が記載されていないうえ、相手先の個人名はすべて黒塗りで隠されている。
これでは何の目的で贈答したのかわからず、地方自治法を遵守した支出であることが確認できない。それに対して、日高副町長はこんな持論を述べた。
「一般的な贈答と感覚的に似ていると私は思っている」
この発言を聞いて、多くの町民は驚くであろう。感覚的に「一般的な贈答」で、日高副町長は日ごろから数万円~10万円の贈り物をしているということである。そして当然のごとく、日高副町長はこう続けた。
「何か具体的にこうしてほしいという話ではなく、お付き合いの範囲であると思う」
単なる「お付き合い」で、これほど高額の贈答を続ける人がいるとは思えない。さらには、何も具体的な目的がないまま、1回に数万円~10万円の贈答をするのは、それこそ地方自治法に違反する支出であると、日高副町長が自ら認めているようなものである。
それでも、これまでの高額な贈答を「妥当」と言い切る荒木町長の金銭感覚は、一般の町民には異常でしかない。そして、それを支える日高副町長も、まったく同じ感覚の持ち主なのだろう。
【動画】屋久島町長の交際費について町議会で答弁する日高豊副町長(2022年9月13日、同町議会YouTubeチャンネルより)
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