取材後記

【取材後記】町の「指南役」法務事務専門員の責務とは? 屋久島町長交際費・住民訴訟

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高額贈答 当初は反省した町長が豹変 一転して「妥当な支出」と主張

住民訴訟 回避の好機を逃す

取材後記20230115

【左上】屋久島町の荒木耕治町長【中央上】国会議事堂(Wikimedia Commons より)【右上】森山裕衆院議員(Wikimedia Commons より)
【下】荒木町長が贈答した焼酎「三岳原酒」

 屋久島町長の交際費で国会議員らに高額な贈答が続けられていた問題で、初めて荒木耕治町長を取材したのは昨年8月だった。町長応接室の奥にある一人掛けソファーに腰かけながら、荒木町長はきまりが悪そうな表情を浮かべて、次のように言った。

「総額で(交際費が)80100万円ぐらいあり、この予算を超えなければ自由に使えると思っていた」

「私の政治は情の部分が多かったかもしれないと反省している。今後は金額や頻度を改めていきたい」

 自民党の森山裕衆院議員(鹿児島4)だけでも、過去5年間に焼酎140本などを贈り、支出した総額は少なくとも50万円。さすがに「贈りすぎた」と思ったのか、荒木町長の言葉には反省の色がにじみ出ていた。

贈答110万円でも社会通念上「妥当」

 ところが9月議会になると、町長の言葉は豹変した。

 1件で10万円分の贈答などについて、一般質問で町議から認識を問われた荒木町長は、「妥当(な支出)だと思う」「町民に大きなメリットがあった」などと主張。わずかひと月前の取材で口にしていた反省の弁は、一転して議場では微塵も出なかった。

 そして、26日には一連の贈答で使った交際費200万円の返還を求める住民訴訟が始まるが、そこでも被告の町側は社会通念に照らして「妥当」な支出だったと主張する見込みだ。関係者によると、裁判所に提出された答弁書で、町側の代理人を務める河野通孝・法務事務専門員がそう書いているという。


町が頼りにする法律の専門家

 当初は反省していた荒木町長だが、なぜ手の平を返したように「妥当な支出」と主張するようになったのか?

 日々の町政運営で法的な判断をする必要が出てくると、決まって屋久島町役場は河野氏に相談をしている。町職員に聞くと、行政問題に詳しい元弁護士で、法的な判断に迷ったときは「とても頼りになる専門家」だという。

 つまり、荒木町長は河野氏の指南を受けて、当初の反省から転じて、一連の贈答が「妥当な支出」と主張するようになったということだろう。

民間業者の相場は贈答1件 数千円~1万円

 だが、1件の贈答で10万円を支出しているケースが複数あり、そんな法外な贈答が一般社会で認められると本当に考えているのだろうか。

 もし、民間業者が交際費で1人につき10万円分の贈答をしていたら、税務署がそんな支出を必要経費と認めることはないだろう。さらには、高額な贈答を受けた側にも税務調査が入り、お世話になっている取引先などに迷惑をかける可能性もある。それゆえ、民間業者が贈答で支出する金額は、1件で数千円~1万円程度と相場が決まっており、それが「社会通念」なのである。

町を正しく導く「顧問弁護士」

 法務事務専門員とは、町役場にとっては「顧問弁護士」のような存在だ。自分たちの公金支出や行政手続きなどをチェックしてもらい、法的な間違いを起こさないために相談する専門家である。そして、もし法的に不適切な点が見つかれば、それを指摘して、町長や町役場を正しい方向に導くことが責務であるはずだ。

高額贈答 反省なければ継続の可能性

 しかし、今回の町長交際費をめぐる対応をみていると、その職責を果たしているようには思えない。少なくとも当初、荒木町長は自身の高額贈答について反省していた。そうであれば、町議会でも不適切な贈答だったと認めて、今後は回数や金額を減らすと町民に約束すれば、それで解決する問題だったはずだ。

 ところが、町議会で問題を指摘された荒木町長は、反省するどころか、一連の高額贈答を「妥当な支出」だったと主張した。つまり、不適切ではないから、今後も続ける可能性があるということだ。そして、その結果として住民訴訟が提起されたのである。

 これは言い換えれば、当初の取材と同じく、9月議会でも荒木町長が反省の弁を述べていれば、この住民訴訟は避けられた可能性があったということだ。

司法に頼らない自浄能力のある町に

 山海留学での体罰訴訟、荒木町長ら町幹部が刑事告発された出張旅費不正問題、補助金不正請求をめぐる住民訴訟。ここ数年、屋久島町で起きた大きな問題は、その解決をすべて司法の手に委ねているが、こんな自浄能力のない町でいいはずがない。

 裁判や警察に頼らなくても、自分たちで問題が解決できる町。当たり前のことだが、果たして、屋久島町がそうなる日は来るのだろうか。

■町長交際費問題 記事一覧

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  1. 諦めムード

    「自浄能力のある町になるだろうか?」
    この行政が続く限り、先ずあり得ません。
    反省の姿勢が微塵も感じられません。

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