遺族、電通事件判決を根拠に「過重労働死は予見可能」 屋久島町営牧場 過重労働死訴訟

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町、週40時間労働との認識で「予見不可能」 最高裁判決、使用者は労働者の健康を損なわないようにする「注意義務を負う」

遺族「町は業務の実情を何ら把握せず」
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【上左】広告大手・電通グループのロゴ(Wikimedia Commons より)【上右】鹿児島地裁(裁判所ウェブサイトより)【下】屋久島町役場

 20198月に屋久島町営の長峰牧場で町職員だった田代健さん(当時49)が公務中に死亡し、過重労働による公務災害と認定されたことを受けて、田代さんの遺族が屋久島町(荒木耕治町長)を相手取り、慰謝料など約7000万円の損害賠償を求めた民事訴訟――。

 この訴訟の口頭弁論で、田代さんの過重労働死について、町が週40時間以内で勤務するように指示していたことなどを理由に、「予見することは不可能であった」と主張していることが、訴訟関係者への取材でわかった。

 それに対し遺族側は、町は実際の労働時間を把握せず、作業日報に週40時間以内で記載するように指示していたとして、「(町が)予見可能性を否定することはできない」と反論。その根拠として、広告大手・電通の男性社員が過労で自殺した事件(電通事件)で、最高裁が使用者の義務として「労働者の心身の健康を損なうことがないように注意する義務を負う」と判断し、社員の長時間労働について、電通に安全配慮義務違反があったと認定した判例を示した。
牧場ベース
屋久島町営長峰牧場の衛星写真(Google Earth より)

町「普段から週40時間で勤務するよう指示」

 鹿児島地裁に提出した準備書面で、町は「普段から雇用契約書上の労働時間(40時間)の範囲内で勤務する」ように指示していたと説明。さらに、作業日報でも週40時間の労働となっていることから、「恒常的な長時間労働に従事している様子は窺われ」なかったなどとして、田代さんが過重労働で死亡することを「予見することは不可能であった」と主張した。

遺族、電通事件の安全配慮義務違反の判例を示す

 その一方、遺族側は準備書面で、「(町は)業務の実情を何ら把握することなく、記載内容を(40時間の労働と)指示した作業日報のみから予見可能性を否定することができないことは明白である」と反論。その根拠として、電通の男性社員が過労で自殺した事件で、2000年に最高裁が電通の安全配慮義務違反を認定した判例を示した。

電通事件・最高裁判例

「労働者が労働日に長時間にわたり業務に従事する状況が継続するなどして、疲労や心理的負荷等が過度に蓄積すると、労働者の心身の健康を損なう危険のあることは、周知のところである。

 労働基準法は、労働時間に関する制限を定め、労働安全衛生法六五条の三は、作業の内容等を特に限定することなく、同法所定の事業者は労働者の健康に配慮して労働者の従事する作業を適切に管理するように努めるべき旨を定めているが、それは、右のような危険が発生するのを防止することをも目的とするものと解される。

 これらのことからすれば、使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相当であり、使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者は、使用者の右注意義務の内容に従って、その権限を行使すべきである」

遺族「予見性を否定する被告の主張は失当」

 この判例を踏まえ、田代さんの過重労働について、遺族側は「作業員からの聴取、現場・作業の状況確認等を通じて容易に認識可能」と主張。さらに、田代さんが雇用契約ではなく、町から業務を請け負う業務委託契約で作業をしていた20183月までの作業日報の記録では、1日の労働時間は10時間超で、ほとんど休日もなかったことから、過重労働について「予見性を否定する被告の主張は失当である」とした。

■電通事件・最高裁判決(2000年3月24日)

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  1. 安房よかにせ

     同じ宮之浦に住みながら、なぜ荒木耕治町長は故田代健さんのご遺族に謝罪できないのか? 私にとって、この事案の謎の一つがこれです。
     また、2023(令和5)年10月13日配信の屋久島ポストの記事にある地方公務員災害補償基金鹿児島県支部に対する屋久島町役場の塩対応にも驚かされました。
     一人の人間が亡くなっているにも関わらず常識的な対応ができないから、この案件に限らず次から次へと訴訟を起こされるのです。
     最後に、立野嘉英弁護士さんが、必ず原告勝訴を勝ち取ってくれると信じています。これからの裁判の行方を最大の関心をもって注視していますので、頑張ってください。
    <参考>
    屋久島ポスト2023(令和5)年10月13日配信記事↓
    http://blog.livedoor.jp/yakushima_post/archives/33503355.html

  2. 安房校区民

    屋久島町は兵庫県と同じ。

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