2024年度から契約書に「委託業務の調査等」の条項を追加 屋久島町・海底清掃事業
22~23年度、業者がごみの廃棄実費や交通宿泊実費などを非公表
町、契約書に調査への協力義務を明記
【上】屋久島町役場【中段】2024年度の業務委託契約書に盛り込まれた「委託業務の調査等」の条項【下左】2022年度の海底清掃事業を請け負ったJTBパブリッシングが入るJTBグループのロゴとスローガン(Wikimedia Commons より)【下中】屋久島町「ふるさと納税」のロゴ(町ウェブサイトより)【下右】2023年度の海底清掃事業を請け負った株式会社「オーシャナ」のロゴ(同社ウェブサイトより)
ふるさと納税で「屋久島の自然を守って欲しい」と寄付された1700万円を活用して、屋久島町が2022年度に実施した海底清掃を主体とする環境保全事業で、総事業費の大半が海底清掃そのものではなく、屋久島の観光情報などを伝える冊子や動画の制作費に支出された問題――。
同事業の3年目となる2024年度の業務委託契約書で、町が業者に対し「委託業務の調査等」ができることを定める条項が、新たに加えられたことが屋久島ポストの取材でわかった。過去2年間の事業では、町が実際にかかったごみの廃棄費や交通宿泊費などを問い合わせても、東京の業者が回答を拒否する状況が続いていた。
船上から海底清掃に向かうダイバーたち(屋久島町YouTubeチャンネルの動画「海・山・川の繋がりで豊かな屋久島の自然を守るプロジェクト」より)
町は業者に対し「調査と報告を求めることができる」
2024年度の事業で町は、地元の屋久島スキューバダイビング事業者組合に業務を委託し、総事業費として約300万円の支出を見込んでいる。
町の情報公開制度で入手した2024年度の業務委託契約書によると、海底、海岸、河川の清掃業務に関する各契約書の第13条で「委託業務の調査等」の条項を新たに追加。「甲(町)は、必要と認めるときは、乙(業者)に対して委託業務の処理状況について調査し、又は報告を求めることができる」と定めている(※丸ガッコ内は屋久島ポストが挿入)。
過去2年間の事業をめぐっては、業務委託契約を結ぶ際に提示された見積書の各項目の支出状況などについて、町や町議らが業者に問い合わせても、詳細な回答を拒否されるケースが続いている。業務委託契約書には「委託業務の調査等」の条項がなく、業者が町の調査などに協力する義務が定められていなかったからだ。
2024年度の海底清掃業務に関する業務委託契約書の一部。赤枠の第13条に「委託業務の調査等」の条項が盛り込まれた(赤枠は屋久島ポストが加工)
実際のごみ廃棄費や交通宿泊費は回答せず
2022年度に町は、旅行大手JTBの出版部門を担う関連会社「JTBパブリッシング」(本社・東京都江東区)と総事業費1700万円で業務委託契約を結んだ。
事業終了後、町議や屋久島ポストの質問を受けて、町が業者側に実際に支出したごみの廃棄費や交通宿泊費を問い合わせたが、JTBパブリッシングは回答を拒否した。見積書には「終了後実費精算」と明記されていたが、この事業の業務委託契約が単価や数量に左右されない「総価契約」であるとして、実際に支出した金額は明らかにしなかった。
研究しない「研究員」らの作業日報の提出を要請
続いて2023年度に町は、ダイビングや海中撮影などを専門とする「オーシャナ」(本社・東京都中央区)と総事業費2000万円で業務委託契約を結んだ。
同社は町に提出した見積書で、「主任研究員」や「研究員」らの人件費として約340万円を計上した。だが事業終了後、町議や屋久島ポストの質問を受けた町が、どのような研究をしたのかを同社に問い合わせたところ、実際には研究活動を一切していなかったことが判明。「主任研究員」には日給7万7000円、20日間で計154万円の高額な報酬が支払われていたことから、町は実際の労働実態を確認するために「作業日報」などの提出を求めているが、同社が提出に応じるかどうかは見通せていない。
2022年度の事業でJTBパブリッシングが町に提出した見積書。屋久島ポストが情報開示請求をすると、内訳が全面黒塗りの非開示とされた
見積書の内訳も「営業秘密」と主張して黒塗り
JTBパブッシングとオーシャナは、町の情報公開制度を踏まえた情報開示にも後ろ向きだった。
この事業の支出について調べるため、屋久島ポストは2023年9月に町に情報公開請求をして、業務委託契約書や見積書などの開示を求めた。だが、両社が見積書の内訳は「営業秘密に関する情報」だと主張したため、町は支出内訳を全面黒塗りの非開示にした。それに対し、屋久島ポストが「寄付金で実施された事業である以上、支出内訳を黒塗りで隠す対応は許されない」と抗議して、11月に再度の開示請求をすると、両社は一転して開示に応じた。
2024年度の業務委託契約書に「委託業務の調査等」の条項が追加されたことを受けて、担当の観光まちづくり課の有馬寿二・統括係長は屋久島ポストの取材に対し、「今後の業務で調査の必要があれば、これまでよりも強く業者に協力を求めることができる」としている。
2023年度の事業でオーシャナが町に提出した見積書。屋久島ポストが情報開示請求をすると、内訳が全面黒塗りの非開示とされた