海底清掃問題

「海底清掃を遂行できる出版社はJTBパブリッシングの他にない」 屋久島町海底清掃事業・住民訴訟

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原告町議、JTBパブリッシングに海底清掃の実績なく「不適法な契約」 被告町「海底清掃事業を遂行できる技術や信用を有する」

JTBパブリッシングは「海底清掃作業の実績はございません」と回答
特命随意契約1

【上左】海底清掃事業を請け負ったJTBパブリッシングが入るJTBグループのロゴとスローガン【上中・上右】「屋久島町ふるさと納税」と屋久島町のロゴ(町ウェブサイトより)【下】屋久島町がJTBパブリッシングに業務委託して制作した観光ガイド冊子「るるぶ特別編集
屋久島」


 ふるさと納税で「屋久島の自然を守って欲しい」と寄付された1700万円を活用して、屋久島町が2022年度に実施した海底清掃を主体とする環境保全事業で、総事業費の大半が海底清掃そのものではなく、屋久島の観光情報を紹介するガイド冊子や動画の制作費に支出された問題をめぐる住民訴訟――。

 この訴訟の第2回口頭弁論で被告の町は、海底清掃を業務委託したJTBパブリッシングについて、「海底清掃といった環境特化の事業を遂行できるだけの技術や信用を有する他の同種出版社」はないと主張した。原告の渡辺千護町議は訴状で、過去に同社が海底清掃事業を手掛けた実績がないことから、同社が独占的に町と結んだ特命随意契約に理由はなく、「不適法な契約」だと指摘していた。

海底清掃活動

海底ごみを回収するダイバーたち(屋久島町YouTubeチャンネルの動画「海・山・川の繋がりで豊かな屋久島の自然を守るプロジェクト」より)

町議「地方自治法施行令に違反した特命随意契約」

 訴状で渡辺町議は、町が2022713日に業務委託契約を結んだ際に、「複数の事業者による競争入札をすることなく、独占的にJTBパブリッシングを委託業者に選び、特命随意契約を結んだ」としたうえで、「JTBパブリッシングは主に観光ガイドブックの出版を専門とする会社であり、過去に海底清掃事業を実施した実績もない」と指摘。それを踏まえ、町が同社を「余人をもって代え難き業者」とする理由はなく、「随意契約の条件を定めた地方自治法施行令167条の212号に違反」した契約だと主張した。

町、同種出版社と比較して「高い適格性を有している」

 それに対し、町は準備書面で「JTBパブリッシングは、親会社であるJTBの関連会社であることから信頼性が高く、JTBが全国的にみて最大手の観光事業会社」だと説明。続いてJTBパブリッシングについては、「迅速かつ円滑な海底清掃実施のための事業者の選定及び確保、清掃状況の撮影や的確なPR活動といった事業を遂行できる信用や経験等を有している」と反論した。

 さらに町は、JTBパブリッシングの専門性を示すために、「海底清掃といった環境特化の事業を遂行できるだけの技術や信用を有する他の同種出版会社」はないと指摘。そして、出版を専門とするその他の同種業者と比較しても、「(JTBパブリッシングは)本件業務に高い適格性を有している」と主張した。
契約伺い
屋久島町がJTBパブリッシングと業務委託契約を結ぶにあたり、競争入札をせずに特命随意契約を結ぶ理由を記載した契約伺いの文書の一部。事業に主目的として、「海底清掃を実施すること」と明記している

JTBパブリッシング、特命随意契約の理由は「地域交流事業」と認識

 町とJTBパブリッシングが結んだ特命随意契約をめぐっては、渡辺町議が20242月に質問状を送り、同社の認識を確認した。それに対し、同社は回答書で「特命随意契約の理由に挙げられている『事業を数多く手がけている』の趣旨は『海底清掃事業』を指すのではなく、当社グループが地域交流事業を多く手がけており、その実績を評価してくださったと認識しております。なお、当社では海底清掃作業の実績はございません」と答えている。

随意契約の法的要件は「その性質又は目的が競争入札に適しない」場合

 随意契約の条件を定めた地方自治法施行令167条の212号は、業務委託契約などにおいて「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」は、1社と独占的に契約する特命随意契約を含めて、随意契約ができると規定している。

 この規定を踏まえて渡辺町議は、JTBパブリッシングに海底清掃の専門性がないことに加え、観光情報を伝えるガイド冊子や動画の制作を担える業者は全国に多数あることから、町が同社と「特命随意契約を結ぶ理由はない」と主張した。

その一方で、町は「本件契約の内容、目等諸般の事情に照らし、不特定多数の者の参加を求め競争原理に基づいて契約の相手方を決定することが必ずしも適当ではない」などとして、町が同社の結んだ特命随意契約に「裁量権の逸脱濫用はない」と反論。それに対し渡辺町議は、2025115日の第3回口頭弁論で主張を補充することになる。

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