虚偽領収書、警察と検察に丸投げで調査せず:【検証 屋久島町政】(29) 出張旅費不正問題
岩山町議「犯人捜し」「一体何をするのか?」と百条委に反対
(この検証シリーズは随時掲載しています)
屋久島町幹部らによる虚偽領収書を使った出張旅費不正精算をめぐり、同町議会が2020年9月25日に否決した不正調査の百条委員会設置案。その審議では、不正追及は町長選をめぐる「派閥争い」という主張や、虚偽領収書を発行していた旅行会社の元社員を擁護する意見が続き、反対多数で否決されました。
岩山町議、的外れの屁理屈を連発
その反対意見を議事録から拾い上げていくと、的外れの言葉が次々と出てきます。なかでも、岩山鶴美町議の発言は際立っていて、反対理由になり得ない屁理屈を連発しています。
「司法に委ねている部分が今たくさんある。そのなかで、百条(委)調査範囲の限界というなかで、検察に侵害を及ぼす調査はできないようになっている」
しかし、この段階で警察や検察が捜査していたのは、岩川浩一前副町長と岩川俊広元議長ら3人だけです。百条委の提案理由では、すべての町職員と町議を対象して、町役場に残された全出張記録について調査すると明確に言っており、岩山町議の主張はまったくの的外れです。また、司法に委ねた問題は、百条委では調査できないということですが、地方自治法にそんな条文はありません。
そして、さらに的外れの発言はこれです。
「一体これは何をするのか?」
提案理由の説明で、岩山町議は、それこそ一体何を聞いていたのでしょう。町職員と町議の全出張記録を対象に、不正清算があったか否かを調査すると具体的に説明しているのに、この発言はあり得ません。
これ以上「犯人」を捜したくない?
岩山町議は提案理由への質疑で、こんな発言もしています。
「これは、もっともっと犯人捜しをするということ」
百条委で調査をすると、さらに不正をした職員や町議が見つかる可能性があるということですが、なぜ、これが反対する理由になるのでしょう。これでは「いま以上に不正が見つかってほしくない」と言って、不正調査に反対しているようなものです。
▶今回のポイント
・虚偽領収書などを調査する百条委設置案が3回目の否決
・岩山町議は司法に委ねた問題は調査できないと反対
・さらに「一体これは何をするのか」「犯人捜し」と的外れの発言も
今回は2020年9月25日に開かれた屋久島町議会の議事録から、百条委員会の設置案に反対した岩山鶴美町議の発言要旨を紹介します。
虚偽領収書などの不正調査をする百条委員会設置案に反対した岩山鶴美町議(2020年9月25日、屋久島町議会)
一体これは何をするのか、どういう調査をするのかというのが明記されていないので、判断できない。
それから4月以来、(出張精算では)船も飛行機も領収書を添付することになっている。抜け穴を塞いで、きちっと精算している時点で、(この不正調査は)まだ、どこかに抜け穴があると言っているようなもので、これは、もっともっと犯人捜しをするということだと思う。
司法に委ねている部分が今たくさんあり、百条(委)調査範囲の限界というなかで、検察に侵害を及ぼす調査はできないようになっている。そういうことからすると、この百条委員会は無意味であり、調査することの方がおかしいと思う。
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▶今回の教訓:町の不正調査を警察と検察に丸投げしない
虚偽領収書などの不正調査をする百条委員会の設置案が否決されたのは、これが3回目です。それまでの間には、次々と町幹部の不正清算が見つかり、一連の不正が町役場の組織ぐるみで行われているのではないか、という疑念も浮かんできました。
それなのに、町役場も町議会も調査をしないために、不正に関わった町幹部は刑事告発されたのです。逆に言えば、もし自分たちで調査していれば、刑事事件にならずに済んだ可能性もあります。
いまの屋久島町は、役場内の不正調査を警察と検察に丸投げしているようなもので、自浄能力がまったくない状態です。