【取材後記】屋久島町議会は日本中の笑いもの 屋久島町議アパート廃材・投棄焼却事件
岩川俊広元議長らの虚偽領収書問題はうやむやで放置 ➡ 石田尾議長は不正調査に反対して「刑事告発すればいい」
コンプライアンス研修で何を聴いていたのか?
【上左】屋久島町議会の石田尾茂樹議長【上右】出張旅費不正で議長を辞任した岩川俊広町議(2020年1月20日)
【下】虚偽領収書を調査する百条委員会設置案に対する各町議の賛否を表示する画面モニター。不正調査を否決した町議は「反対」の下に名前を連ねている。議長の石田尾町議は採決に不参加(2022年6月22日)
「自治体議員に求められる『コンプライアンス』とは」
屋久島町議会の町議たちは、どんな思いで8月1日の議員研修を聴いていたのだろう。
議員が不祥事を起こした場合は、まず初めに議長声明を出すなどして、議会としての認識を表明することが重要。続いて、特別委員会などを設置して、不祥事に対する調査と認定を行う。そして、議員の発議で問責決議や議員辞職勧告決議などを提案することが求められる。
研修の講師が言葉を発する度に、多くの町議は自分たちの来し方を振り返り、あまりの恥ずかしさにその場から立ち去りたいと思ったに違いにない。なぜなら、その講師が言っていることと、これまで屋久島町議会が続けてきた議会運営は、まったくの正反対だからだ。
議長や副町長らが虚偽領収書で旅費を着服
その極みは、2020年初めに発覚した岩川俊広議長(当時)ら議会幹部による出張旅費不正精算だ。岩川議長らは実際より高額な航空運賃が記載された虚偽の領収書を添付して、より高額な旅費を受け取って着服していた。だが、その不正が発覚しても、岩川議長らは虚偽領収書を受け取った経緯を説明することなく、単に着服した金額を町に返還して幕引きをしようとした。
それにもかかわらず、町議会の大多数は岩川議長らの不正について見て見ぬふりをした。同年3月には、一部の町議から虚偽領収書の発行経緯などを調査する百条委員会の設置案が提案されたが、多くの町議は圧倒的な反対多数で否決した。さらに、同じく虚偽領収書で不正精算していた岩川浩一副町長(当時)の減給処分をめぐっては、処分より先に不正調査が必要だと訴える一部の町議に対し、現議長の石田尾茂樹町議は調査に反対したうえで、「刑事告発すればいい」と言い放った。
岩川浩一副町長(当時)の減給案について賛成討論する石田尾茂樹町議。反対意見に対して「刑事告発すればいい」と発言した(2020年3月23日、屋久島町議会)
詐欺などの容疑事実を認めて起訴を免れる
それを受けて、住民団体は岩川議長や岩川副町長ら3人を刑事告発した。そして、3人は検察で詐欺や虚偽有印公文書作成・同行使の容疑事実を認めて謝罪し、役職辞任や減給などで社会的制裁を受けたとして、起訴猶予の不起訴処分となった。だが、起訴猶予で公開の裁判が開かれなかったために、虚偽領収書がどのような経緯で発行されたのかは不明のままで、岩川議長らも詳細に説明しようとはしなかった。
そこで、一部の町議は再び不正調査の百条委の設置を提案したが、またしても町議会は反対多数で否決。その後も百条委設置に対する反対は続き、これまでに計5回も否決されており、いまだに虚偽領収書が発行された経緯は明らかになっていない。
鹿児島地検が発行した岩川俊広町議に対する処分通知書の一部。不起訴の理由として「起訴猶予」と記載されている
町議会の常套句「刑事事件として決着」
百条委に反対する町議たちの常套句は、「すでに刑事事件として決着している」だ。警察と検察が捜査したので、町議会はもう調べる必要はないというのである。だが、これまでに確認された少なくとも計15枚の虚偽領収書について、だれが何の目的で、どのように発行したのかはまったくわかっておらず、これでは再発防止策を講じることはできない。
つまり、岩川議長らによる虚偽領収書の問題は、いま現在でも未解決の状態で、うやむやのまま放置されているということである。
岩川俊広町議が出張精算で提出した航空運賃の虚偽領収書。実際には半額ほどの運賃で搭乗していた
不法投棄焼却事件は議題として認めず
それに加えて、今回は現職町議による廃棄物の不法投棄焼却事件である。岩山鶴美町議は自身で経営する賃貸アパートのリフォーム廃材を不法に投棄、焼却したというから、かなり悪質な違法行為だ。また、岩山町議は不法投棄する1年前の町議会で、ごみを捨てる町民が多いことを批判したうえで、ごみのポイ捨てにも罰金を科する条例を町長に提案しており、屋久島町民1万2000人を代表する町議会議員としては、町民に謝罪して辞職するべき状況に陥っている。
これまでの取材で、岩山町議はすでに略式起訴されたことが明らかになっており、近く罰金の略式命令が出される見込みだ。
【左】岩山鶴美町議が投棄した廃棄物(2020年9月14日、町民提供)
【右】廃棄物が焼却された現場(2021年1月5日、同)
石田尾議長は議員研修の「反面教師」
8月1日の議員研修を受けた直後、複数の町議が岩山町議に事情を聴こうとしたが、石田尾議長は質問を排除して、この事件を議題にすることを認めなかった。研修では、議員の不祥事に対して、まずは「議長声明」などで議会としての認識を表明することが重要だと指摘されていたが、石田尾議長の対応は「反面教師」そのものである。
こんな無責任で身勝手な議会運営を続けているようでは、屋久島町議会は日本中の笑いものだ。そして、日本初の世界自然遺産の島としては、世界中の笑いものである。
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